前田悠伍に「去年と一緒」…先輩からの“痛烈な言葉” 意識が変わった千賀&今永との日々

インタビューに応じた前田悠伍【写真:冨田成美】
インタビューに応じた前田悠伍【写真:冨田成美】

2軍で3登板、防御率1.50「もっと真っすぐを磨きたい」

 鷹フルでは今シーズンも、主力選手はもちろん、期待がかかる若鷹にもスポットを当てて「連載」をお送りします。今回は、2年目のドラ1左腕・前田悠伍投手の登場です。2軍で防御率1.50と好結果を残しているものの「物足りない」。ハッキリと話す理由がありました。タマスタ筑後でのロッカーで、ある先輩からかけられた言葉に自身が目指すべき道を再認識しました。次回連載は、4月5日に掲載予定です。

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 今年は春季キャンプからA組入りし、開幕1軍入りを目指してきた。2軍降格となったのは3月5日。「2月の紅白戦でも一番感じたんですけど、真っすぐが良くないと変化球も泳いでヒットにされる。もっと真っすぐを磨きたいと、今まで以上に思っています」と語る。ウエスタン・リーグでは3試合に先発登板して1勝2敗。黒星が先行しているが、防御率1.50はさすがの数字だ。

 細かく登板日と、内容を並べてみる。まずは2軍開幕戦となった14日の中日戦(タマスタ筑後)。初回に失点したものの、6回を投げて74球、1失点にまとめた。中6日での21日の中日戦(同)も、同じく6回1失点。奪った三振は1つだった。そして、自身の現状を認識し、明確な課題を持って臨んだのが28日のオリックス戦(同)だ。6回2失点ながら、19歳はその内容に頷く。過去2試合との違いはどこにあったのか。

「最初の2試合はピンチになったら、追い込んだら変化球で三振を取りにいっていた。去年と同じような感じでいってしまっていた。1軍で通用しなかった。2軍と言われた時に出力がまだまだ1軍レベルじゃないことを共通認識として話をしました。28日、は真っすぐで(2軍に)落とされているんやから、それを磨かなあかんと思って腕を振りました。久しぶりに146キロが出たんですけど。あの時のような投球を求めて、試合の中で強さを上げていけたら」

 昨年は2軍で4勝1敗、防御率1.94。高卒1年目から確かな結果を残した。しかし、1試合だけ登板した1軍マウンドでは3回6失点と実力の差を突きつけられた。「2軍でかわしていたら、1軍に上がったら無理ですし、それは去年の10月にわかったので。真っすぐだけでも圧倒できる感じは持っていたいですね」。目先の結果ももちろん必要だが、求めているのは将来を見据えたスケールアップ。相手を制圧できるだけの投球だ。

藤井皓哉から指摘「抑え方、去年と一緒じゃない?」

 2軍戦で3試合に登板し6回1失点、6回1失点、6回2失点。結果だけを見れば優秀な数字に思えるが、本人は「物足りない」とキッパリ言う。大阪桐蔭高時代には3度の“全国制覇”(明治神宮大会2度、選抜大会1度)を経験し、ドラフト1位で入団した19歳。自身の中で“理想”がはるかに高くなっている証だ。

「自主トレの時から2人のメジャーリーガーとやらせてもらいました。今永(昇太)さんと千賀(滉大)さん。その時点でもっと高くなったし、キャンプもA組でやらせてもらったり、(モチベーションが)下がるものがないですよね。どんどん上を見て、まだまだだなと。今のままじゃ到底無理やなと思えたので。それが逆によかったというか。2軍にいるんですけど1軍、1軍以上を見ていないと無理ですから。それを練習からいろいろ考えながらやっています」

 具体的なきっかけもあった。21日、藤井皓哉投手が調整で2軍に合流していた。1軍でも経験豊富なリリーバーと、前田悠はロッカーで20分ほど話をしたという。かけられた言葉は「抑え方、去年と一緒じゃない?」。得意であるがゆえに、ピンチで変化球に頼ってしまうスタイルを見抜かれていた。「『真っすぐでガンガンいけば?』と言われたことで、確かになと思えてスパッと切り替わりました」。今はとことん、自分だけの直球を追い求めたい。

「28日は6回2失点という面だけ見たら、全然ダメと思うんですけど、その中でいろんな気付きがあったので。真っすぐでファウルも取れたし、変化球も生きるとわかった。あと、頭が突っ込んでしまう悪い癖も出て、逆に速い球を投げたいと思って上半身で投げていた。それを5回、6回で修正して球速も戻ってきていたので。内容とか細かい課題では、自分的には上がっていきそうだとは思いました」

 自身に対して課題はもちろん、大きな可能性だって感じられている。次回は「風邪すらひけない」という重圧……。自主トレをともにした今永の存在に迫っていく。MLB開幕戦を見て、前田悠が抱いた感情とは――。

(竹村岳 / Gaku Takemura)