「国際部部長」の松本裕一氏が語る米国時代
欠かせない戦力になった若き助っ人は、どんなふうにホークスから“発掘”されたのか。「課題」を与えられた球団が、見つけ出したのがジーター・ダウンズ内野手という“才能”だ。2024年7月に入団した背番号4。獲得の経緯を、松本裕一球団統括本部編成育成本部国際部部長に聞いてみた。「最低ライン」だった獲得の条件とは?
ダウンズはコロンビア出身で、1998年7月27日生まれの26歳。2017年、MLBドラフトの全体32位でレッズから指名された。トレードも経験しながら、メジャーデビューしたのは2022年。当時の所属はタイガースだった。通算では20試合出場にとどまり、主にマイナーリーグで過ごす時間が長かった。
牧原大成内野手とともに、今は二塁の競争を繰り広げている。28日、ロッテとの開幕戦(みずほPayPayドーム)では「7番・二塁」でスタメンを託された。小久保裕紀監督も「フォアボールでも出塁できるというところで、評価は去年から高いです」と語る存在。二遊間を守れる守備力に、ボール球には簡単に手を出さない選球眼……。首脳陣も戦力として1軍に置き続けるダウンズを、ホークスはどのようにして見つけ出したのか。
「アメリカの野球が、重きを置いているポイントが日本の野球と違うんじゃないですか。長打力、長打力って言われているし、そうするともっと打てるやつ、もっと打てるやつってなっていくじゃないですか。それで溢れてしまう。でもこっちの野球は守備も走塁も重要じゃないですか。彼(ダウンズ)も高いレベルを兼ね揃えているから、価値があるのではないでしょうか。それは1つとしてあると思います」
松本部長が代弁した。昨シーズンもホークスで1本塁打を放ったが、決してパワーヒッターというタイプではないだろう。パンチ力こそ秘めているものの、長打を求められるメジャーの世界で、なかなか突き抜けられずにいた。「コンタクト力があるし、選球眼がある。日本の野球が合っているんでしょうね。それを彼も気に入ってやってくれているし、日本が好きで長くやりたいって言っているので」と続けた。
2024年7月24日、ホークスは石塚綜一郎捕手ら4選手に“2桁”を与えた。支配下は「69」となり、残りは1枠。“最後の1人”として、獲得したのがダウンズだ。球団は、どんな条件を持ちながら70人目の選手を探していたのか。海の向こう側で調査を続けていた松本部長には、明確な方針があった。
「ショートを守れること。それが最低ラインでした」
実は存在した“他の候補”…見極めた球団の目
米国を見渡しても、一定の打力を備え、かつ二遊間を守れるという選手は多くないという。昨シーズンも、1軍で遊撃は4試合経験した。「万が一、ショートに何かがあった時に、守れる選手。それが、僕たちのその時の課題でした。今宮(健太内野手)が元気にやってくれていれば問題もないと思うけど、離脱した場合ね。そこを補える選手がいれば、という話で探していました」と松本部長は振り返った。今だから言えるのは、数人の候補がいたということだ。
「何人か(日本でもショートを)守れそうな選手がいたんですよね。向こうも守れて打てる選手は少ないですから」。候補の中でも、ダウンズの能力は攻守ともに高い評価だったという。今になっては立派な1軍戦力となっているのだから、球団の“目”は正しかった。「やっぱり彼が頑張っているからじゃないですか。研究して、自分でやるべきことをやっている。手がかからないです」と話す。
小技やサインプレー、細かい日本の野球に対応してみせる。ダウンズ自身は、米国時代を「自分の立場で、人のことはコントロールできない。自分のプレーの質とかが、当時はそのレベルに達していなかったのかもしれない。今は年も重ねて、いい選手になったことが結果に繋がっているのかもしれないので」と頷いた。チームの勝利に貢献する。目標は1つ、秋に味わう歓喜の美酒だ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)