3月27日に迎えた23歳の誕生日
23歳の誕生日は、特別な時間となった。2025年シーズンの開幕戦前日となった27日。大山凌投手はこれまでとはまるで違う誕生日を迎えた。2月18日に第1子が誕生。父となって迎えた初めての誕生日は、家族の温かさを改めて実感する一日だった。
2年目となる今季は開幕1軍を掴み取った。「去年の今頃は2軍で先発してましたね」。そう笑顔を見せる右腕には、中継ぎとしての活躍に期待がかかる。「1年間1軍に居続けることが目標です。開幕1軍でなければその目標は達成できないので、まずはスタートラインに立てたと思います」と決意を新たにする。
そんな大山が迎えた開幕前夜。これから始まる長いシーズンへの緊張もある中、妻が用意した“サプライズ”に驚いた。「なんじゃこりゃ」――。家族3人で迎える初めての誕生日は、心安らぐ時間となった。
「家でコース料理のようなことをやってくれたんです」
妻が用意してくれたのは、本格的なフレンチのコース。食卓には紙に書かれたメニューが置かれ、思わず「なんじゃこりゃ」と声が出た。最初に運ばれてきたのは、真鯛のカルパッチョ。「刺身を食べるときはいつも真鯛なんで」と語るように、大山にとって真鯛はお気に入りの食材。お酒にも合う好物を最初のメニューに選んでくれたことに、妻の愛情を感じた。
その後も、かぼちゃのスープやサーモンのレアカツ、そしてリブロースのステーキと、豪華な料理が次々と食卓に並んだ。最後には2種類のケーキも登場した。「ケーキは買ってきたやつです。でもめっちゃうまかったです」と満足そうな表情を浮かべた。23歳の誕生日はかけがえのない時間になった。
実はスムーズに進まなかったコース料理
愛息と囲む初めての誕生日。しかし、ディナーは思うように進まなかった。「ミルクを飲んでました。なので、思うようにコースが進まなかったです」と大山は笑顔を見せる。途中で泣き出す場面もあったが、それすらも幸せな時間だった。「いやぁ、いい誕生日でした。パパ1歳になりました」と、これまでに感じたことのない感情を味わった。
妻のサプライズのおかげで、開幕前日の緊張は和らいだ。
オフには1人で自主トレを行い、フォームの改良にも取り組んできた。「ムラが出ないようなフォームにしたい。その中でも強くしなきゃいけないところはたくさんあるので、バランスよくやっていけたら」とシーズンを見据えてきた。
「トレーニング中、きつくなった時に自然と子どもの顔が浮かんでくるんです。もう、自分1人のためだけじゃない。その先に活きる気がします」。父となったことで得た新たな力。家族の存在が大きなモチベーションになり、大山の背中を強く押す。右腕の後ろには常に支えてくれる家族がいることを実感している。
家族と過ごす大切な時間が、責任感と覚悟を育てる。「1試合1試合を大事にするのはもちろんですけど、結果に執着しすぎるのはよくないと思っています。自分の計画の中で進めながらも柔軟に対応していくことを去年学びました」。1年間1軍で戦い続けるために――。父として迎える初めてのシーズンが始まる。
(飯田航平 / Kohei Iida)