打率1割台で開幕1軍「ワクワク20%」 正木智也の本音…目にした“監督の記事”

正木智也【写真:冨田成美】
正木智也【写真:冨田成美】

1月は井上朋也や仲田慶介らと自主トレ…理解する自らの立場「僕は打たないと」

 鷹フルでは、2025年シーズンも「月イチ連載」として、主力選手を追いかけていきます。今回深掘りしていくのは、正木智也選手です。テーマは「開幕を迎えるにあたっての心境」。目前に控えたスタートラインを前に「ワクワクは20%」。正木選手が抱く思いと、強い決意に迫ります。次回掲載は、3月31日の予定です。

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 開幕1軍の座を掴んだ。しかし、その表情から伝わるのは喜びだけではなかった。「本当はもっとオープン戦で打ちまくって、誰の文句も出ないような形で1軍に残りたかった」。目標の1つをクリアしたが、納得のいく形で勝ち取れなかったことが胸に引っかかっていた。

「打って打って打ちまくって取れたなら、自信になったと思うんです……。監督の記事でも見ましたけど、勝ち取ったという成績ではないので、そこは自分でもそうだと思っています。シーズンが始まれば、オープン戦の結果は関係ない。もうイチからやるだけかなと思います」

 オープン戦では2本塁打を記録。確かな成長を見せた一方で、終盤には失速した。21日からの広島3連戦では、12打席に立ち無安打。打率.192という結果で、小久保裕紀監督には「物足りないですね、はっきりいって。チャンスを掴んだとは思わないです」と言わせてしまった。正木自身も「勝ち取った成績ではない」と冷静に振り返る姿に、悔しさがにじむ。

 昨季は80試合に出場して打率.270、7本塁打、29打点。時には5番打者も任されるなど、6月21日に1軍昇格して以降は自分のポジションを守り抜いた。だからこそ、真価が問われる2025年。オフシーズンから、開幕1軍が“最初の壁”であることは理解していた。「なんとか乗り越えました……。でも、シーズンが始まれば、もっと高い壁が待っている。それをどんどん打ち破っていけるように、毎日野球のことを考え続け、本当にがむしゃらに1年間をやり抜きたい」と言い聞かせた。

■1月は井上朋也仲田慶介らと自主トレ…理解する自らの立場「僕は打たないと」

 1月は、主に福岡市内で自主トレを行なった。雪が降る中で3時間バットを振り続けたこともある。グラウンド上では、クールな表情を貫く25歳だが、口癖のように唱えていたのは「絶対に負けたくない」――。鬼気迫る表情からは、今季にかける覚悟が伝わってきた。開幕直前となった今も、その姿勢は変わらない。練習後には居残りで特打や特守を重ねるのは、さらなる数字を残したいという探究心から。そして正木の“負けん気”そのものだった。

 これまでも、味わった苦い思いは全て力に変えてきた。技術的な向上はもちろん、経験値を積み上げていることも正木の成長だ。オープン戦では61打席を消化。65打席に立ったリチャード内野手に次いでチーム2位の多さで、まさに首脳陣からの期待の証だろう。「周りを見れば、すごい選手ばかり。自分なんてまだまだだなって思うことばかりです。だからこそ練習しないと、その人たちには追いつけない。この1年間もそうですけど、野球をやっている限り、この姿勢は変えずに続けていきたいです」。

 自らの立ち位置も、理解している。求められているのは、持ち味である打撃面を発揮することだ。「僕は打てないといけない。打ち続けて、ずっと試合に出られるように。開幕は調子とか関係ない。全力でピッチャーに向かっていくことだけを意識したい」。1軍定着のために必要なのは、結果だけ。ここから先は、自らのバットで道を切り拓く。

「ワクワクは20%ぐらいですね。不安や緊張の方が大きい。でも、開幕1軍に残させてもらったからには、結果で示したい。これまでやってきたことを信じて、自信を持って臨みたいです」

 できる準備はやってきた。あとは、結果を残すだけ――。覚悟を決めた正木智也が、プロ4年目のシーズンを迎える。

(飯田航平 / Kohei Iida)