開幕2日前も泰然「準備といっても開幕に向けたものじゃなくて…」
退路を断ち、挑む勝負の8年目――。鷹フルがリチャード内野手の単独インタビューをお送りいたします。第1回目のテーマは決定的となっている開幕スタメンへの思いについて。「だから……っていう感じです」。刺激的な発言に込めた25歳の覚悟とは。
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こちらがドキッとさせられるような言葉だった。「報道陣の方は『開幕から絶対やります』って言ってほしいんでしょうけど……」。そう口にしたのはリチャード。開幕を2日前に控え、明かした正直な思いだった。
昨季は三塁のベストナインとゴールデン・グラブ賞に輝き、今季も絶対的なレギュラーとして期待されていた栗原陵矢内野手が右脇腹を痛めて開幕に間に合わない公算だ。オープン戦を総括した小久保裕紀監督は「リチャードにはその分、しっかりとアピールしてほしいですね」と言及。28日の開幕戦で25歳をスタメン起用することを事実上、認めた形だった。
昨季まで5年連続でウエスタン・リーグの本塁打王に輝くなど、高いポテンシャルを見せる一方で、1軍の舞台ではどうしても結果を残すことができなかったリチャード。プロ8年目の今季、これ以上ないチャンスといえる状況に本人は何を思うのか——。
「最近たくさん聞かれるんですよ。『開幕スタメンが見えてきましたね』みたいな。でも、正直『だから何』って感じです。『開幕から絶対やります。頑張ります』って言ってほしいんでしょうけど、やるべきことをやるだけなので。準備といっても開幕に向けたものじゃなくて、いつも通り動けるように。準備不足で怪我とか、動けないことがないように。それだけを考えてやりたいですね」
周囲から見れば、栗原が復帰するまでの時期にどれだけ存在感を示せるかが一つの勝負所だと捉えがちだ。もちろん結果の重要性はリチャード自身も分かっている。だが、そうなってばかりではいけないことも、これまでの経験から学んだことだ。
「これまで結果に一喜一憂していましたけど、別にやることは変わんないなと。例え3三振しても別にそれが僕だし、ホームランを打っても僕っていうスタイルでいきたいですね。『開幕スタメンだよ』と言われたからって、ホームランを5本狙うわけじゃない。緊張はするでしょうけど、いつも通りのスイングをして、ホームランが出てくれたらいいなと思います」
そういった心構えは、落ち着いた様子で取材に応じるリチャードの姿にも見て取れた。「ダメだったら普通にクビになるだけだと思うので。何があっても動じないというメンタルは身についてきたのかなと思います」。今春のキャンプから常に繰り返している「準備」という言葉も、やるだけやってダメなら仕方ないという覚悟の現れだ。
「開幕戦ももちろん大事ですけど、1試合は1試合。もっと未来を見据えながら、どんな最強ピッチャーでも打てるようにしといた方が将来的には絶対にいいので。そっちの準備が先です」。目指すのは開幕戦での活躍だけじゃない。リチャードの2025年がいよいよ始まる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)