右腕には愛妻と、1人の愛息がいる。3月に1歳を迎え、“ハイハイ”も覚えたところだ。「もちろんお祝いしました。奥さんが栄養士なので、(自分に)甘いものはまだ食べさせてくれません。だからケーキは食べていないんですけど、プレゼントを買いに行ったし、僕たちにとっては特別な日でした」と笑顔で話す。「ハッピーバースデー」と歌い、頬を寄せながら誕生日を祝った。昨シーズン中も、本拠地の試合は毎日のように観戦していたが、長男が泣いているのは見たことがなかった。
2024年3月、小久保裕紀監督の了承をもらって愛息の誕生に立ち会った。「監督が『行っていい』と言ってくれました。福岡で生まれた子どもなので、あれから1年が経ったと思うと感慨深いです」と時の流れを噛み締める。昨季は39試合に登板して、0勝3敗24セーブ、防御率3.76。父親になった日を振り返っても、思い出すのは首脳陣からの信頼と期待。自身に言い聞かせるように繰り返した。
「監督もコーチも、すごく僕のことを思ってくれている。それで去年、結果が出なかったことに対して、今年はプレッシャーを勝手に感じています。これだけよくしてもらっているので、やらないといけないなって気持ちはあります」
メキシコで生まれ、裕福な環境ではなかった幼少期。食事の時は必ず兄弟とともにテーブルを囲み、暑さの中で何キロも先にある学校まで歩いて通った。だからこそ、母からは「自分が何かをしてもらったら2倍にして返しなさい」と教えられた。自分自身も父親となり、愛息に願うのは同じことだ。
「お金よりも、人として成長してもらいたい。お母さんにも言われた『愛情は倍にして返しなさい』ってことももちろんですけど、特に日本はリスペクトも、教育も、愛情表現も素晴らしい。子どもを育てるには最高の環境なのかなと。そこは自分の国とは違う。だから子どもはここで育てたいと思っていますし。長く日本でプレーして、より子どもが育ちやすいように」
家族の前では、ありのままの自分でいられる。一方で、父として大切にしているのは、どんな瞬間も親であることを忘れないことだ。「例えば赤ちゃんの前でビールを飲んでいたら、それはよくないじゃないですか」。年俸10億ともいわれる右腕だが「正直、今着ている服もジーター(・ダウンズ)からもらったズボンだし、このシャツも800円です。だから、お金に左右されるんじゃなくて、自分の人生を楽しんでいける。そんな子に育ってほしい」と続けた。
昨年12月の優勝旅行、オスナは参加していなかった。オフといえば、家族と過ごす時間も増える。意外かもしれないが、旅行はほとんどしなかったそうだ。「妻の両親と、僕の両親に子どもを会わせて、一緒にいることを大事にしました。自分たちにとっては一緒に飲みながら、ご飯を食べたり踊ったりする。そういう時間が大事なんです」。特別なことは必要ない。日常を大切にしながら、英気を養ってきた。ホークス3年目となる2025年も、家族の支えを受けながら、全力で駆け抜けていきたい。
「自分がちゃんとすれば、いい子に育ってくれる。いいものを食べさせれば、健康に育ってくれる。身近で楽しめるのが、親の一番の特権じゃないかなと思います」。大好きな日本の環境で、かけがえのない時間を過ごしていく。目標はもちろん、ホークスの日本一だけだ。