12年間守り抜いてきた座を簡単に譲るわけにはいかなかった。「やることができたから、今ここにおるんかなと思います」。21日から1軍に合流した今宮健太内野手はオープン戦3試合をこなした。来たる28日のシーズン到来に向け、きっちりと標準を合わせている。
2月13日に左ふくらはぎを負傷し、同18日に宮崎のキャンプ地を離れた。約1か月間のリハビリ生活をどのように過ごしていたのか。1軍の試合を「見ていなかったです」――。
当初の診断は全治2か月だった。自身の感覚とは異なり、セカンドオピニオンを受診。「負傷の程度が、最初と後の診断で違ったので。ぱっと切り替えて。やることができたから、今ここにおるんかなと思います」。開幕1週間前に1軍へ合流し、オープン戦では3試合で7打数2安打。「戻ってきて、ある程度のものは出せたのかな」とうなずいた。
2013年から守ってきた開幕ショートの座。12年連続は柳田悠岐外野手と並んでチーム最長だ。常勝軍団を結果と行動で引っ張ってきたリーダーだが、リハビリ中はチームを気にする余裕はなかった。
「もう本当に自分のことで精一杯だった。どれだけ1日でも早く合流できるように次のステップにいけるのかってことしか正直考えていなかったです。(1軍の試合を)見たいと思う人あまりいないでしょうね。怪我してとか、(2軍に)落ちてきてとか。自分にできることをやろうと思っていました」
これまでにも同じ左ふくらはぎを痛めたことはあった。シーズン途中に離脱し、そのまま1年を終えたこともあった。それでも、開幕直前の怪我は初めて。プロ16年目を迎える33歳でもチーム全体を見る余裕はなかった。だからこそ戻ってきたからには全力で、チームを勝利に導きたいと考えている。
奈良原浩ヘッドコーチは「健太が大丈夫なら、もちろん健太でいく」と“開幕ショート”へ絶大な信頼をおく。21日の広島戦後、今宮自身は「開幕どうこうは考えていないです。まずはこの(OP戦の)2試合」と話していたが、オープン戦を終えて、開幕への思いを滲ませた。
「まずはここを目指してやってきているというのは、ここ何年ずっとあるので。こういった形にはなってしまったんですけど、この形だからこそ、より責任感を持って年間通して守っていかないといけないなと思います」
「100パーセントでやれていないと(1軍に)おる意味はないなと思っている」。出遅れた分、1日でも長くシーズンを過ごす。激しいポジション争いのホークスで、今年も遊撃の座を守り続けてみせる。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)