中継ぎ配転の4日前 松本晴が見せた笑顔と“意味深な言葉”…明かした「本心」

松本晴【写真:冨田成美】
松本晴【写真:冨田成美】

ウインターリーグで見た「こいつらかっこいいな」

 決意を新たにするための笑顔だった。日本ハムとのオープン戦が行われた15日の練習中、松本晴投手に小久保裕紀監督が歩み寄る場面があった。会話の最中には左腕から笑顔がのぞいており、開幕ローテの枠を争う立場として、朗報が伝えられたのではないか――。そんな空気も漂っていた。

 練習後、本人に話を聞くと意外な反応が返ってきた。「今は言えないです。ポジティブな話と、ネガティブではないですけど……。どっちもです」。慎重に言葉を選ぶ姿が印象的だった。

“真相”は4日後に明らかとなった。19日に行われた中日とのオープン戦(みずほPayPayドーム)。8回のマウンドに上がったのが松本晴だった。2イニングを投げ4奪三振。力強いピッチングで結果を残した。「あの時の話はこういうこと(中継ぎ転向の話)だったんです」。試合後に晴れやかな表情を見せた左腕。開幕ローテという大きな目標を掲げていた中で、どのように気持ちを切り替えたのか。そこにはオフに受けた刺激があった。

「悪いことっていうとおかしいですけど、先発ローテーションから外れたことは事実。いいことと言えば、自分にとって絶対プラスに働くだろうっていう思いがあるので。出力をもっと出したいなと思ってましたし、もっと真っすぐが良くなってくるはずなのに、色々と考えることが多くてうまくいってなかったところもあったので。中継ぎになることで、もっとシンプルに、ゾーン内で思い切り腕を振っていけるので。そういう面ではプラスかなと。今はポジティブに捉えています」

 開幕ローテ入りを目指していた左腕は、配置転換を告げられた時の気持ちを鮮明に覚えている。「すごく悔しかったですね」。それでも、尾形崇斗投手からは「絶対に自分のプラスになる」と声をかけられ、自身も「今後のキャリアにもいい影響を与えると信じているし、やるだけですね」と気持ちを切り替えた。

 先発から中継ぎへ。環境の変化は決して小さくない。それでも、この転向を受け入れられた背景には、昨年オフに参加したプエルトリコのウインターリーグでの経験がある。現地で目の当たりにしたのは、状況に関係なくどのような場面でも投げることを求める、ハングリーな投手たちの姿だった。

「クローザーが8回から出てきてイニングを跨いでセーブを記録するとか。どんな場面でもいいから、とにかく俺を投げさせてくれって。何イニングでも投げますし、それを見てかっこいいなと思ったんです」

 その精神に共感した。「イニングも跨げて、中ロングもできて、先発もできて、ワンポイントもできる。1イニングを任されても圧倒できるような、そういうピッチャーを自分も目指したい」。異国で過ごした日々は、松本晴に新たな投手像を描かせるのには十分な経験だった。

 だからこそ、自分が求める姿に近づくチャンスだと前向きに受け止めることができた。さらに小久保監督が直々に言葉を伝えにきたことにも感謝の気持ちを述べた。「チームの事情もありますし、左が少ないっていうこと。そういう話でした。直接言っていただいたのは嬉しかったですね」。開幕ローテは逃したが、中継ぎへの不満など微塵もない。与えられた場所で、最大限のパフォーマンスを発揮するだけだ。

(飯田航平 / Kohei Iida)