鷹フルは、城島健司CBOの単独インタビューを行った。今季から「チーフベースボールオフィサー」に就任した経緯と理由を激白した。入れ替えが激しいプロ野球という世界で、本気で見据える10年後。ホークスの未来のために「王さんから色濃く影響を受けた僕ら2人が、現場とフロントにいることが“強み”です」。小久保裕紀監督とともに抱くビジョンを明らかにした。
2012年、阪神で現役を引退すると、ホークスに復帰したのは2020年。「会長付特別アドバイザー」として、福岡に戻ってきた。新しい形でチームを支えるようになって、今年が6年目。満を持したように「フロントのトップ」に就任した。その理由を「大きくは2つです」と明かす。
「1つはオーナーが掲げる『めざせ世界一』がありますよね。それは10年間、優勝し続けるということです。それだけ年数があって、選手が変わらないはずがない。選手を入れ替えながら、チームを強くしていくことはフロントの仕事なんです。10年後の選手って、まだプロにも入ってきていない。中学生とかですよね。それを今の監督に『中学生にいいやつがいるんです。どうですか?』って、できないじゃないですか。でも、10年後のホークスが戦力として必要とするなら、育成しないといけない」
城島氏が強調したのは、明確な役割の違い。1人の監督がグラウンドで指揮を執りながら、有望な選手を探し、勝利と育成を両立させていくことは極めて難しい。だからこそ城島氏が「フロント側」からチームを支えていく。「監督はいい材料が揃って、その戦力を発揮して、作戦を通じて試合に勝つことの繰り返し。戦力や人材の補給は我々の仕事なんですよ。勝ちながら育成するのは非常に難しいこと。分業制なので、小久保さんは現場のリーダーで、僕はフロントのリーダーです」と続けて語った。
「それプラス、こんな選手がいるっていうことをメディアを通して、世の中の人に知ってもらわないといけない。そして、プロ野球はスポンサーもいます、資金も必要です、こういうのはフロントの仕事ですよね。両立しないといけないですから。現場と、フロントのトップの考えが、王イズムという大きな柱を持っているということ。この2つが、僕らがやる大きな仕事。王さんから色濃く影響を受けた僕ら2人が、現場とフロントにいることが“強み”です」
チームにおいても、今季はさまざまな変化が起きている。1軍の打撃コーチは1人となり、スキルコーチが新設された。最新鋭の打撃マシンが本拠地にも導入された。城島氏は「現場っていうのは、入れ替えが激しいんですよ。10年後なんて、コーチも選手もほぼ変わっています。だからこそ、未来のフロントに僕が伝えないといけない。例えば、これまでは小久保監督がね、今の野球に合わせて色んなアップデートをしているのを現場だけで終わってたんです」。進化を続ける野球というスポーツ。“遺産”として受け継ぐのは、自分の役目だと胸を張った。
フロント陣は“背広組”とも表現される。チームの勝利はもちろんだが、王会長の思いを継承していくには、フロント側こそ重要だと城島氏は言う。「サラリーマンの方が22歳で社会に入って、65歳までいるんです。大卒だと43年間もありますよね。その人たちがデータを把握した方が未来のホークスのためになる。小久保さんが今やっている新しくて、素晴らしい変化をフロントマンが、ソフトバンクにまだ入っていない中学生とか小学生、なんならまだ生まれてない子にも残していかなきゃいけない」。
その根本にある思いこそ、“王イズム”だ。1995年に当時ダイエーの監督に就任し、2008年まで指揮を執った。第一線を退いてからも、野球への情熱は誰よりも抱いている。愛弟子として背中を見てきた城島氏も「王さんだったら、50年後だって生きているかもしれないですけど」と笑う。「継承だなんていうと、30年前に戻るかと思われがちですけど、それは違います。古臭いことをしているわけではない」と、込められた“真髄”を口にした。
「王さんはいい変化をしなさいとずっと言われていた。野球がどんどん変わっていくことをあの人は否定しないので。『俺の時はこうだった』『昔は……』って話をする人ではない。僕は2020年に戻ってきた時に『王さんが作り上げたチームを20年後、30年後の選手たち、ファンの方、フロントの方に知ってもらいたい』って。まさにそれを今やっているだけですよ。CBOっていうのは、勝った負けたで一憂するのが仕事じゃないので、チームにはいますけど、勝敗に直結する仕事ではないということですよね」
孫正義オーナーが掲げる「めざせ世界一」を叶えるため。王会長の意思を受け継いでいくために、フロントのトップになった。城島氏にとっても特別な存在。次回は「なぜ王さん」と呼ぶのか。その理由に迫っていく。