工藤公康氏が鷹フルの単独インタビューに登場
“工藤ホークス”にとって切っても切れない存在だった。工藤公康氏が監督に就任して2年目の2016年、和田毅氏は米球界からホークスに復帰した。同年、いきなり15勝を挙げて最多勝に輝いた左腕。「もちろん、頼もしかったですよ」。成績面もさることながら、チームにとってそれ以上の“財産”をもたらしてくれた。
鷹フル「和田毅引退試合特設ページ」
和田毅投手の引退を記念し、鷹フルは3月14日~16日の3日間「WaDa-Full」に。王貞治氏や松坂大輔氏らが語る特別企画「和田毅の記憶」、ホークス現役選手74人のメッセージを公開。「和田毅引退試合特設ページ」はこちらから。続きを読む
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「彼は自分から何かを教えるっていうタイプではないですけど、話を聞きに来る選手にはしっかり教えてあげたり、来るもの拒まずでやってくれる選手でした。彼自身がやっていることも、若い人たちにはすごく勉強になる。『この人でもこんなにやるんだ』『俺たちはもっとやらなきゃダメなんだ』と思ってもらえるので。非常にいい見本として頑張ってくれたことは、本当に感謝していますよ」
頼もしい存在である一方、工藤氏は常に“ある懸念”を胸に抱いていたという。「ずっと気にかけて見るようにしていました」。その真意とは――。
「彼は練習をやらずにはいられないんでしょうね。長い時間キャッチボールをやった後に人知れず壁当てをやったりするので。『なんでやるの』と聞いたら『いい感覚なので、もうちょっと確かめようと思いました』と。だから『今日できたことが明日もちゃんとできているかをチェックするのも1つのコンディショニングの考え方だよ』と伝えたんです。それでも彼は『そうですねー』と言いながら、また次の日も同じ感じでやるので。僕はそこからずっと気にして見るようになったんです。『またやってる!』みたいな。彼は笑って『ちょっとだけです~』と。そういう会話は常日頃からしていましたね」
和田氏がホークスに復帰した2016年には自主トレ内容を聞いて目を丸くしたこともあった。「『20メートルとか30メートルのダッシュを100本やって、97本目で足がつりました』みたいな話を聞いて。そこまでやっているからこそ、これだけの成績を残したり、あれだけのボールが投げられる。本当にさすがだなと。改めて彼に言うことは何もないなと思いましたね。監督として練習のやりすぎをここまで心配した選手はいないです」。キャリアを重ねても、変わらなかったストイックな姿勢。工藤氏が厚い信頼を寄せるのも当然だった。
工藤氏が舌を巻いたのは、圧倒的な練習量だけではなかった。「子どもに『真似しなさい』とはなかなか言えないですよ、あれは」。解説してくれたのは、ボールの出所が見えにくい和田氏の独特な投球フォームについてだった。
「あれだけボールを見せないようグーッと体重移動をして、ボールを前でリリースができるのは、ピッチャーとして相当練習を積んだり、技術がないとできないこと。それだけ難しいフォームを自分で研究しながら作っていったんだと思います。真似をしようと思っても僕にはできない。もし近い投げ方ができたとしても、あの球威は出せないですね」
2011年に48歳で現役引退を表明した工藤氏と、43歳でユニホームを脱ぐ決断を下した和田氏。2人はプロ野球選手の中でもほんの一握りしか見ることができない“景色”にたどり着いた。「素直に『本当に長い間お疲れさん』という言葉しかないですね」と工藤氏。40歳を超えてもなお、マウンドに立ち続けることの難しさは誰よりもわかっている。
「30代の前半と中盤も違うし、中盤と後半も違う。40歳になったらまた違います。大体、3年から5年くらいの周期でどんどん体は老いていくので。筋力を落とさないように、常に投げられるようにと考えるんですけど、やっぱり衰えには勝てないので。それに抗うのが野球選手かなと。彼のあの投げ方を維持するのも相当な筋力や柔軟性、スキルなど、様々な要素が必要なはずです。衰えていく体に抵抗しながらも、その一つ一つを限界まで積み上げていったと思っています」
工藤氏自身は「ボロボロになるまで、という思いでやっていました」と明かした上で、和田氏の決断を尊重した。「ある意味で長く現役をやるというのは痛みと戦ったり、うまく体が動かない現実と戦わなくてはいけないので。人それぞれ、これ以上は無理だと思う瞬間はある。まだまだ続けてほしいという思いはありましたけど、それを最終的に決めるのは自分なので」。
ともに40歳を超えても自らの限界と戦い続けた左腕同士。「想像を絶するような努力がないと続けられなかったんだと思います。彼にとってはそれが当たり前かもしれないですけど」。現役時代は通算224勝を誇り、監督としても就任7年間で3度のリーグ優勝、5度の日本一と、名将と呼ぶにふさわしい結果を残した工藤氏。和田氏はそんな男が認めた“不世出の左腕”だった。
74選手の贈る言葉「永遠のアイドル」「一緒に馬を」 和田毅が後輩たちに伝えた“最後の思い”
鷹フルでは、和田毅投手の引退に際し、取材のできたホークスの74選手から“贈る言葉”をいただきました。仲間たちが語る和田投手の存在の大きさ、そして最後に和田投手からチームへのメッセージも。受け継がれる思いとともに、その言葉をお届けします。続きを読む
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)