目の前で倒れる周東佑京に「やっちゃった…」 顔から引いた血の気…正木智也を救った一言

正木智也(左)と周東佑京【写真:冨田成美】
正木智也(左)と周東佑京【写真:冨田成美】

12日の巨人戦で復帰した周東…正木も2安打で好調をキープ

 自身の体に走った痛みよりも、真っ先に頭をよぎったのは“最悪の可能性”だった。「“神様、どうか……”って。本当にそんな感じでした」。そう振り返ったのは正木智也外野手だった。

 9日のロッテとのオープン戦(ZOZOマリン)。2回無死で左中間に飛んだ安田の打球を必死に追いかけた周東佑京内野手と激しく交錯した。すぐさま起き上がった正木の目に映ったのは、うずくまったままの先輩の姿。ことの重大さを感じ取ると、顔から血の気が引く感覚に襲われた。

「ヤバいかなと思いました。(周東が)倒れ込んでいたので。自分は全然大丈夫だったんですけど、『やっちゃったな……』と思いましたね」

 昨秋の日本シリーズが終わった直後に左膝を手術し、今春のキャンプではS班の一員としてリハビリをこなしながら状態を上げてきた周東。選手会長としても強いリーダーシップを発揮してきただけに、チームを離れることになれば大きな打撃になることは間違いなかった。

 自らの足でベンチに下がった周東に、イニング終わりですぐに声をかけた。「大丈夫ですか?」。返ってきたのは「大丈夫、大丈夫」との言葉だった。「怪我はありませんか」と再確認すると、笑みを見せながら「多分大丈夫だと思う」と返事をもらった。

 正木自身にとっては開幕1軍入り、そして定位置取りに向けてオープン戦は大事なアピールの場でもある。だからこそ、「あの言葉に救われましたね」。アクシデントが起こる直前の2回には左翼にアーチをかけていたが、その1本に終わらずに8回の第4打席でも右前打を放ち、マルチ安打をマーク。自身のプレーに集中できたのも、選手会長の言葉があったからだ。

 昨年9月、不調に苦しんでいた際には「そろそろ打てよ」と冗談交じりで背中を押してくれた周東。「話しかけやすいですし、本当に優しくて慕いやすい先輩です」と話すほどの存在だからこそ、無事だったことが何よりもうれしかった。

「大丈夫だと分かって、本当にほっとしました」。周東は12日の巨人戦(みずほPayPayドーム)に出場し、適時打をマーク。正木も2安打を放って“復帰祝い”した。尊敬する先輩とともに活躍し、リーグ連覇と日本一を成し遂げたい――。その目標のため、まずは自らのことに全神経を注いでいく。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)