“母国”の予選通過を見届け、宮崎市内のホテルで静かに闘志を燃やした。今季からホークスに加入した張峻瑋(チャン・ジュンウェイ)投手は2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場を目指す。「もちろん出たい気持ちはあります」。あどけなさは残るが、表情は真剣そのものだ。
台湾出身の19歳。2023年のU-18ワールドカップに出場し、昨年はU-23代表にも選出された。ドジャース・山本由伸投手に憧れ、米国挑戦も考えた最速156キロ右腕は、なぜ日本行きを決めたのか――。
身長179センチとプロ野球選手の中では大柄ではないが、体全体を使ったフォームから最速156キロの剛球を投げ込む。台湾では“火玉男”の異名を取り、キャンプはB組に配置。27日にはブルペン入りし、見守った川越英隆コーディネーター(投手ファーム統括)も「すごく楽しみです」と期待する。
台湾ではU-15から代表入りするなど、常に世代のトップを走ってきた。「球のスピードと変化球のレベルが高い」と憧れる山本が海を渡り、自らもメジャー挑戦を考えた。米国を訪れたこともあったが、日本を選んだのは練習と食事の環境だった。
「日本の方が自分らしく投げられる。食事や練習環境も日本の方がいいと思いました」
福岡から台湾は飛行機で約2時間。時差も少なく、台湾に近い食生活ができる日本が自らを成長させることができると感じた。初めてとなるプロのキャンプに「レベルの高さは感じます。全体練習より、自主練が多い。個人の時間を大事にしています」と話していた一方で「台湾と練習の違いとかはありません」ともすぐに馴染んでいた。
日本での生活にも慣れてきた。入団当初は言語の壁を不安にしていたが、今は通訳と密にコミュニケーションをとっている。「ラーメンが美味しいですね。天神か博多らへんにはいきました。食事も美味しく、台湾と似ているのでありがたい」と白い歯を見せる。
“先輩”の存在も日本行きを後押しした。穀保家商高時代の1学年上、孫易磊(スン・イーレイ)投手が日本ハムと育成契約。孫は25日のWBC予選のスペイン戦に登板し、1回2/3を無失点の好投で本戦出場に貢献した。「高校の憧れの先輩なので。高校時代も超えられるように練習してきた。日本でも超えられるように頑張りたい」と目指す。
ブルペンでもすでに150キロ台を連発している張だが、ロッテ時代にドジャース・佐々木朗希投手を指導した川越コーチは、育成に慎重な姿勢を見せる。「出力が出過ぎると怪我してしまうので」。球数と登板間隔を管理して、1年間は体力作りを中心に行う“朗希スタイル”でじっくり成長させる方針だ。
同世代は前田悠伍投手や育成の藤原大翔投手、ダリオ・サルディ投手らがいる。前田悠とは投げ合いこそなかったものの、2023年のU-18W杯に共に出場した。「同じプロになって、ライバルとして意識するようになりました」。目指すは今年中の支配下登録と来年の開幕1軍。まだまだ、荒削りではあるが、ベールを脱ぐ日はそう遠くなさそうだ。