26日の紅白戦で3者連続3球三振…明らかだった左腕の“変化”
クールな表情のまま、マウンド上で決意をたぎらせていた。「キャンプが始まってからアピールしきれなかった部分があったので。今日は強い気持ちで臨みました」。26日に行われた韓国ロッテとの練習試合。8回から登板した前田悠伍投手が自らの殻を破って見せた。
先頭打者にいきなり中前打を浴びると、スイッチを切り替えた。「変に力まずに、いつも以上に腕を振って投げることができたので。それが今日の結果につながったのかなと思います」。切れのある真っすぐをガンガン投げ込み、次打者から3者連続3球三振と圧倒的なピッチングを見せつけた。続く9回も味方の失策でピンチを背負ったものの、気迫の投球で走者は返さず。2回を無失点で、直球は最速144キロを計測した。
15日の紅白戦では2イニングを5安打2失点と納得いく内容を残せなかった。23日のオリックスとのオープン戦後には倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が「休み明け(26日)からはしっかり評価させてもらうことは選手にも伝えている」と明言。結果が問われるマウンドに向け、左腕は覚悟を決めた。
「きょうの試合から評価が始まるというのは頭にありました。、『アピールしよう』というよりは“捨て身”というか。『どうなってもいいから思い切り投げよう』と決めて行きました」
前田悠といえば19歳とは思えぬクレバーな投球術と、スマートな思考が特徴的な左腕だが、それだけでは通用しないことは痛感していた。「そういう覚悟でキャンプに入ったつもりでしたけど、周りから見れば『まだまだ』と捉えられていたので。より強く意識してやりました」。自身のイメージをかなぐり捨て、ただがむしゃらに腕を振った。
その思いは投球内容にも現れていた。「海野(隆司)さんから『どういう感じで投げたい?』と聞かれたので、真っすぐ中心でお願いしますと伝えました」。相手打線は試合中盤に木村光投手や村田賢一投手の真っすぐをきっちりと捉えていた。それでも、臆するどころか真っ向勝負に打って出た。「余計に燃えたというか。『真っすぐを打たせんとこう。絶対に打たせへん』みたいな気持ちでした」。
キャンプ序盤には体調不良に見舞われ、体重が一気に落ちた。その影響を言い訳にすることはなかったが、ようやく83キロほどまで戻ってきたことで力強さも出てきた。「きょう(26日の試合)はアピールできたのかなと思いますけど、この1回だけでは足りないので。気を抜かずに頑張ります」と拳を握った。
「開幕ローテに入ることが目標ですし、そこを達成してこそ、1軍で1年間投げ続けるというところも達成できると思うので。1日1日を無駄にしないよう、練習からやっていきたいなと思います」。ドラフト1位の“エリート像”を自らぶっ壊し、どん欲に突き進んでいくだけだ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)