栗原に球種バレバレ、「気づいた」周東のサイン 移籍後の古巣戦…感じた“やりづらさ”

栗原陵矢(左)と周東佑京【写真:中戸川知世】
栗原陵矢(左)と周東佑京【写真:中戸川知世】

2023年11月にトレードで巨人に移籍…泉圭輔が振り返る新天地での1年目

 新天地で、2年目のシーズンに臨む。「最近ですか? 元気にやっていますよ」。巨人の泉圭輔投手が、鷹フルの取材に応じた。昨年5月、ホークスとの試合。周東佑京内野手や、栗原陵矢内野手との対戦で感じた“やりづらさ”を語った。

 2023年11月にトレードで巨人に移籍した。1年目の昨季は35試合に登板して2勝0敗、防御率1.93。プロ初セーブをあげるなど、リーグ優勝に貢献した。「理想としてはホークスと日本シリーズをやりたかったですけどね。個人的にはすごく充実した1年でした」と振り返る。クライマックス・シリーズでDeNAに敗退した。古巣との頂上決戦は叶わなかったが、安定した成績でもう1度、花を咲かせることができた。

 5月28日から東京ドームで行われた古巣・ホークスとの3連戦。泉は1戦目と2戦目に登板した。「めっちゃやりづらかったですよ。こんな投げづらいものなんだって思いましたし、不思議な感じでした。(高橋)礼さんと言っていたのは『顔を見たら終わりだな』って」と苦笑いするのは、全てを知り尽くした元同僚たちだからだった。

 まずは28日の第1戦。2点を追う8回から登板した。同点、逆転するには最少失点で切り抜けたい場面。1死から周東を迎えた。ホークス時代から関係の深かった1歳年上の先輩。ヘルメットのツバに手をやり、“目配せ”してきたことはすぐにわかった。「もちろん気づいていましたよ。やるだろうなって思っていたんですけど『あ、やったやった』みたいな」。この状況でもやはり、相手をよく知るからこそやりづらかったという。

「佑京さんの前が緒方(理貢)で、セーフティバントでアウトになったんですけど(結果は投ゴロ)。これまた佑京さんもセーフティしてくるんじゃないかな、そんなことはないかなとか色々考えていたら、気づいたら2ボールになっていました。まずいまずい、と思って真っすぐでファウルを取ろうと思って強めに投げたらファウルフライ(三邪飛)に抑えられましたね」

 29日の第2戦、0-0の延長10回からマウンドへ。当然、1点も与えられないシチュエーションだ。首脳陣から登板を告げられた時点で、先頭打者が栗原であることはわかっていた。「個人的なことだけで言えば、そりゃ2死走者なしでやりたかったですけどね。『マジかよ』って思いましたよ。同点で緊張感ある場面でしたから。練習中にいろんな話をしちゃったぶん、投げづらかったです」。同学年の盟友だからこそ、対戦相手として全力で抑えにいった。

 2ボール2ストライクから、結果は右前打。「『何投げようかな』とか話していたからこそ、ヒットを打たれてやられましたね。『どうせツーシームやろ』ってその時に言われていたんです(笑)。最後は首を振って、投げたのがツーシーム。球種バレバレでしたね」と苦笑いする。チームの勝敗を背負った真剣勝負の中で、「クリは特に抑えたかったですね」と新鮮な気持ちを抱きながら、マウンドに上がっていた。

 元同僚との“その後”の交流については「ありますけど、ホークスが東京ドームで試合の時はジャイアンツが遠征に出ていますから」。日程が被ることも少なく、なかなか会うチャンスを作れていないという。「1番会っているのは重田(倫明広報)かな」と笑って明かした。オフシーズンの12月には自ら福岡に足を運んだ。「2日間行ったんですけど、1日目は(東浜)巨さん、板ちゃん(板東湧梧)、笠谷(俊介)。次の日は森(唯斗)さん、甲斐野(央)、あとは通訳の方と。ゴルフをするためだけに行きました」と貴重な再会の時間となった。

 2023年は3試合登板に終わり、トレードで新天地にやってきた。競争する立場にいることは間違いないが、崖っぷちも味わったからこそ、野球ができることに喜びも感じている。目標は昨年と同じ「ホークスと日本シリーズで対決すること」。泉らしい誓いだった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)