チーム最年長で迎える今シーズン…ファンに見せたい姿とは
15年目のシーズンも野球に対する思いであふれている。チーム最年長となった今も、そのバットにかける情熱は衰えることを知らない。今春キャンプからS組が導入され、柳田悠岐外野手は独自の調整を続けてきた。「しっかり自分でやりたい練習をできていますし、体もすごく順調なので。楽しくできています」。そう語る表情には充実感が滲む。
自主トレから精力的に練習を重ね、開幕に向けた準備を進めてきた。バットの出し方やタイミングの取り方など、細かな調整を地道に行い常に進化を求める姿勢は若手選手にとっても大きな刺激となっているだろう。そんな中で、柳田が野球への思いを語った。
「ユニホームを着ている以上は、年は関係ないと思うんで。どの選手が相手でも勝てるようにやりたいと思います」
1月に柳田が自主トレをともにしたのは、又吉克樹投手、佐藤直樹外野手、笹川吉康外野手だった。特に笹川とは年齢が大きく離れている中、「14個も下の選手と同じ練習やるのエグいやろ!」と冗談混じりに笑いながらも、淡々とポール間ダッシュや打撃練習を繰り返してきた。
その姿は春季キャンプに入っても一切変わることがなかった。S組の打撃練習を終えた後も、1人で打撃マシンと向き合い続けた。室内練習場に響き渡る打球音で、柳田がいることがすぐにわかる。「1日1日を大事に」。練習が終わると充実した表情で引き上げていく。
本隊への合流以降も、S組が打撃練習を行うのはA組が昼食に入ってからだ。A組の練習が終わる頃に「待ってました」と言わんばかりの笑顔で柳田はベンチから飛び出す。山川穂高内野手、近藤健介外野手とともにケージに入れば、3人でホームラン競争を行っているかのように、次々とスタンドへ放り込む。年齢を感じさせないスイングと、心から野球を楽しむ姿。昨年、シーズン途中で離脱した悔しさを晴らしてくれることを期待せずにはいられない。
そんな柳田の7年契約は、今年を入れて残り2シーズンとなった。自主トレ中には「あとちょっとしか野球はやらないと思うので」という言葉も聞かれた。「契約自体はあと2年なんで。2年でもし終わるとなるとあとちょっとやと思いますし、それが仮に2年じゃなかったとしても数年やと思うんで。残りちょっとかなっていう気持ちです」。改めて語られた「あとちょっと」という言葉。しかし、それは限られた時間を、最高のパフォーマンスで駆け抜けたいという、強い決意の表れでもあった。
柳田の親友でもあり、昨年現役を引退した元ホークスの福田秀平さんは体がボロボロになるまで選手生活を全うした。死球で骨折した肩甲骨は真っ二つに割れ、痛み止めを飲みながらプレー。回復と再発を繰り返し、最後の最後まで戦った。「そこまで自分を追い込めるってのもすごいことだと思うし、かっこいいと思います」。その姿を讃えつつ「美学というか、人生長いんで、足をひきずりながら引退したくないです」と、らしい考えを口にする。
「レギュラーで素晴らしい成績を残してやめるっていうのが自分の理想ですね。イメージは、まだやれるのにというか『まだやってください』って言われるぐらいの成績ですね」
今季も小久保裕紀監督は柳田をレギュラーとして明言している。最年長になっても常に高みを目指し、進化を続ける姿勢を見れば、それも当然のことだろう。「ファンの方に素晴らしいプレーをたくさん見せられるように。そういう気持ちでやっています」。野球を純粋に楽しむ表情と、ファンへの思い――。今季も柳田がスタンドを熱くさせる。
(飯田航平 / Kohei Iida)