「ホークスは層が厚いですから。いくら必死に練習をしても、試合で能力を発揮できないとなかなか厳しい。リチャードはやっぱり、すぐに打たないと。実績がある人は年間を通して首脳陣に見てもらえますけど、(リチャードは)我慢してもらえる実績もないですからね」
“すぐに打つ”というのは、実戦で結果を残すということに他ならない。6日から始まる第2クールは、初日と4日目にフリー打撃で投手が登板する予定だ。その後も紅白戦、対外試合、オープン戦と実力を試される舞台は次々とやってくる。「今年のリチャードは違う」と思わせるためにも、スタートダッシュが最も重要になるというのが山川の持論だ。
リチャードにとって山川は師であると同時に、試合に出場するためには超えなければならない“壁”だ。現状について山川は「バッティング練習は凄いですけど、全然(自分を)抜けないと思います」と競争相手として見てはいない。それでも可愛い後輩のため、グラウンド外でも協力を惜しむことはない。
宿舎の食事会場が“フィードバック”の場となっている。一緒の席に座り、1日の振り返りをするのが2人のルーティンだ。「今日はこうだったね、ああだったねって。お前はこうなっているから、こうしたほうがいいよとか。バッティングの技術論も含めて、そういう話はリチャードに毎回しています」。山川は自らの時間を割いてでも、弟子の成長を引き出そうとしている。
師匠の思いをリチャードもしっかりと受け止めている。「しっかりと頭を整理できる時間というか。例えば自分がすごく頑張ってやっていても、外から見ればそう見えない時だってある。もっと改善できるところがあるんだなと。いつも教えてもらっています」。客観的な言葉をもらうことで、自らの姿を冷静に捉えることができている。
「あまり疲れてはいないですけど、自主トレの時とは違いますね。やっぱり緊張感はあります」。リチャードはそう口にしながら、バットを手に屋内練習場へと走り出した。自身に向けた厳しい言葉だけでなく、しっかりと手も貸してくれる師匠の思いに応えたい――。山川のそばで1年間プレーし、“未来の主砲”の二つ名を返上してみせる。