ギータからも言われた「お前めっちゃおもろいな」
54人もの育成選手が在籍するホークス。その中でも一際先輩たちに可愛がられている選手がいる。それが2023年育成ドラフト2位で東京農業大から入団した宮里優吾投手だ。この日も遠くから両手を振って「お疲れっす!」と大きな声で挨拶を交わしてくれた。
現在は「入団前からの目標」と語る尾形崇斗投手に弟子入りし、主にファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で自主トレを行っている。そんな宮里に歩み寄っていったのが、現在リハビリ調整を続けている松本裕樹投手だった。「このグラブ使ってみ」。宮里のキャッチボールを見た松本裕が、グラブひとつで球筋が変わることを熱心に教える姿があった。
なぜここまで宮里は先輩たちから気にかけてもらえるのか――。長髪の選手も多い中で、かなり短く刈り込んだ頭。もみあげから顎髭まで一直線に繋がる。一見、“コワモテ”で近寄りがたそうに思われがちだが、柳田悠岐外野手でさえも「お前めっちゃおもろいな」と声をかけるほど。多くの先輩が声をかけたくなる宮里の魅力はどこにあるのか。本人に直撃した。
「僕に聞かれてもわかんないですよ。僕も話しかけてもらえることに対して『マジで?』って感じなんですよ。マツ(松本裕)さんはリハビリが一緒で、なんか怖いなって思ってたんですけど。話してみたら全然。僕のコミュ力ですかね(笑)」
リリーフ陣の柱として確固たる地位を築いた5学年上の松本裕に対しても、失礼のない範囲で素直な感情を伝えることができる。「マツさんからグラブを1個貸りているんですけど、僕の手が大きすぎて全然入らないんですよ。『マツさんこれ小さいですね』って言いました」。首脳陣に対してもそれは同じで、物怖じすることなく接する。遠征先では、コーチ陣に呼ばれて食事をともにすることもあるほどだ。目上の人と本音で語ることができることも宮里の魅力だ。
「笠谷(俊介投手)さんもめっちゃよくしてくれたし、鍬原(拓也広報)さんも。年上の人と結構仲良くさせてもらっていますね。津森(宥紀投手)さんとかもめっちゃ可愛がってくれます。津森さんはモンクレールのロンティーを誕生日に買ってくれましたし、最初は自主トレにも誘ってもらっていたんです」
ファンフェスティバル2024では、リーゼント風のコスプレで壇上にあがったり、ダンスを披露して会場を盛り上げた。「小久保(裕紀)監督からは『お前ピッチングよりもダンスの方がキレてんじゃない?』って言われて。これはマジで野球で結果を出さないとやばいなって思いました」。思ってもみない形ではあったが、指揮官と会話する機会もあった。
昨年の7月13日のオリックス戦(タマスタ筑後)で、2軍初登板を果たした。7回にマウンドに上がると、3者連続三振。雄叫びを上げながら派手なガッツポーズを披露するなど、気迫を全面に押し出す投球スタイルが持ち味だ。その後もリリーフとして17試合に登板し、2勝1敗、防御率4.86の成績。「(期限の)7月に支配下になれるようにとかじゃなくて、キャンプとオープン戦でアピールして、すぐに上がれるように」と、今季中の支配下登録を目指している。
宮里を可愛がる先輩たちからは、本気のメッセージがたくさん届く。「笠谷さんからもLINEで『お前はやれば絶対に支配下になれるから頑張れ』って言ってもらえました。たくさんの先輩たちから、そう言ってもらえることは本当に嬉しいです」と笑顔を見せる。今は尾形が考案した練習メニューに食らいつく毎日。いち早く先輩たちと同じステージに立てるように――。進化した姿を春先にどれほど見せることができるのか。宮里のアピールに注目したい。
(飯田航平 / Kohei Iida)