倉野コーチ「僕の目が腐っている」 高卒新人に「開幕1軍は絶対ない」通達した背景

ソフトバンク・倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】
ソフトバンク・倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】

ドラフト1位の村上泰斗には「即戦力ではないということは聞いています」

 ソフトバンクの倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が13日、ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」の練習を視察した。投手陣の姿を見守った後、取材に対応。年が明けて初めて筑後を訪れ、選手たちからは何を感じたのか? 話題はドラフト1位の村上泰斗投手や、前田悠伍投手、松本裕樹投手ら、多岐に渡った。コメントの全文は以下の通り。

――今日の目的は?
「ミーティングもしました。とりあえず今日初めてだったので、僕の思うこと。新人に対してプロ野球生活が始まるけれども、ここから、こういう意識を持った方がいいみたいな。心得みたいな、僕が思う話をさせてもらいました」

――キャッチボールを見た印象は?
「いやいや、別に技術指導はしていないし、声をかけただけ。初めてなんで、挨拶程度です」

――3人がブルペンに入った。
「まず1つ言えるのは、僕の目が腐っているから、今じゃ全員よく見えます。ブランクなんですよ。やっぱ2か月生きた球を見ていないと、目が腐っているんですよ。僕はもう絶対オフのこの期間は選手を評価しないって決めているので。昔痛い目にあったこともありますし。目が腐ってるので、参考にならないです」

――キャンプに向けての青写真は?
「振り分けはある程度、頭にはあります。これから選手の状態を確認しながら進めていく作業にはなると思いますけど、大枠は決まっています。入れ替わった選手もいるんで、それも踏まえてちょっと見直していくかっていうところはあります」

――昨年、前田悠は「特別強化プログラム」という形になっていたが、村上は?
「村上に関しては報告でしかね(聞いていない)。僕も今日初めて会っただけなので、どうこうの評価もないし、フロントからの評価とか、そういう情報をもらって。悠伍と同じようなプログラムというわけではないですね。もう少しじっくりいく形になるかなとは、今のところ思っています。もちろん上方修正はしていく可能性もあります」

――昨年の前田悠は、色々見て勉強してもらうことも含めて春季キャンプは宮崎にいたが、村上は?
「まだどこっていうのは決まっていないし、言えないんですけど。とにかくじっくりというイメージです。高卒の選手に関しては特にですけど、夏ぐらいに急激に上がってくれるようなイメージは持っているので、それは伝えました。実際、千賀とかもそうだったし、8月ぐらいに急激にポンと上がったので。やっぱあれが理想系かなと思います。そのイメージは持ちつつも、千賀のポテンシャルはちょっと違いましたから、同じようにはならないと思いつつ、あれがやっぱり理想系だなって。これ結構いいネタですよね。千賀の名前を出すといいネタになる」

――前田悠自体は1年目のような「特別強化プログラム」はもうない?
「悠伍に関してはプログラムはしないですね、細かいプログラムは。ただ、例えば、じゃあ30歳の選手と同じように、中6日でバンバン回していくかって言ったらそうじゃないとは思いますけど。でも(小久保裕紀)監督もコメントしていたように、競争の輪の中には入っているわけですから。一部の戦力だとしても、急激に中6日で回していくっていうプランにはならないかなと。それもわからないですけどね。本人がこのオフでどれだけ積み上げられたかっていうのは重要視したいなと思うので。それを見てからですね」

倉野コーチ(左)とフェリペ・ナテル4軍投手コーチ【写真:冨田成美】
倉野コーチ(左)とフェリペ・ナテル4軍投手コーチ【写真:冨田成美】

――場合によっては管理していくことも考えていく?
「管理って言っても去年ほどのものはないですね。ある程度他のピッチャーと同じように競わせながらっていうのは前提としてはあります」

――村上はポテンシャルを上げてほしい?
「そうですね。即戦力ではないということは聞いていますので」

――じっくり大きく?
「高卒の選手には言いましたけど、今の時点で開幕1軍は絶対ないからって断言しました。でもね、育成の選手も含めて夏ぐらいに期限がありますけど、あのぐらいの時にどーんと出てくれたら、今の実績あるメンバーが疲れてくる(時期な)ので、シーズン中盤になってくると。その時に助けてもらえるような、そんなイメージは理想系としては持ってます」

――千賀の時はキャンプはどうだった?
「あの時は、そんな人数もいなかったんですよね」

――試合にはいつ投げさせた?
「4月の終わりぐらい。千賀はとにかく1番遅かったんですよ。試合で投げ始める同期生、高卒1年目の選手が5人ぐらいいたんですかね。その中でも1番遅かったですね」

――夏場に向けてというところ。
「あれをちょっと基準にしちゃうと、ちょっと。あれは突然変異的な。もう10年に1人ぐらいの伸び方をしましたので。あれを基準にはできないけど、理想系ではありますよね」

――その資料は?
「その資料は僕の手帳の中にしかないんですよ、実は。その当時はそういう球団のシステムに残すことがなかった時代なので、僕の手帳を見れば書いてます。毎日のことを。見せないですけど」

倉野コーチ(左)と村上泰斗【写真:冨田成美】
倉野コーチ(左)と村上泰斗【写真:冨田成美】

――松本裕はキャンプS班に選ばれた。本人にはどう伝えた?
「もう今の状況を聞いて、というだけですね」

――基準は?
「それはもう監督とも話をして、僕が全部決めているわけじゃないので、監督としっかり相談しながら。しっかりいい状態っていうか、自分の投げる状態を作ってくれれば、当然1軍の戦力はもう確定しているので」

――成績や日頃の取り組み方を全て加味した上で?
「成績です。成績と、純粋に力です。逆を言えば、S班に入っていない人は競争しているってことですよ。ただ、その中で全員横一線ではないです。去年の実績、これまでの実績プラス去年の評価っていうものは、当然アドバンテージがある人はいるので。なんでもかんでもゼロスタートねっていうことは絶対僕はしたくないし、あり得ないと思うんで。当然アドバンテージがあって当たり前だと思います」

――S班導入は、右肩痛でリハビリ中の松本裕にはいい影響になるのでは?
「結果どうなるか、その時にならないとわからないです。ただ純粋に評価したっていうだけですね」

――尾形崇斗投手、杉山一樹投手も含めて1イニングの投手は6人と監督も言っていたが、そこも同じ?
「純粋に力を評価してっていうところではあります。ただ、100%開幕1軍っていうわけではないですよね。そうなるとS班と一緒になる。ある程度S班っていうのは、自分で開幕に合わせられるメンバーでもあります。でも去年の実績とか力は、当然アドバンテージです。それを追い抜くぐらいの選手がキャンプで出てきてくれたら嬉しいなと思いますけど、波大抵のものではなかなか追い越せないと思いますよ」

――高卒は開幕1軍はないと言っていたが、大卒や社会人には何か伝えた?
「何も言っていないです。当然可能性はあります。高校生に関しては僕は考えていないです。高校生だからっていう言い方しちゃうと可能性を狭めちゃうようであんまり言いたくはないですけど、現状の報告とか全部聞いた上でそういうふうに判断しています」

――ドラフト6位の岩崎はいい球を投げていた。
「わからないです。目が腐っちゃってるんで。みんないいピッチャーに見える。今日朝やったメンバーもみんないいピッチャーに見えた。相当腐っているから。選手に申し訳ないですけど。というか、僕の今の目は評価するに値しない目なんで、一切評価しないです。元気に動けてるかな? みたいなところだけです」

――上沢が加入して、話もされたとおっしゃっていましたけど、どんな言葉をかけた?
「普通に話しましたけど、具体的にどうこうは言えないし。覚えてないです」

(飯田航平 / Kohei Iida)