そんな左腕は、2年目となる今季を「開幕ローテに入ることが目標」と捉える。“英才教育”はどのように生きてくるのか。限られた開幕ローテーションの枠に食い込んでいけるのか――。その現状に迫った。
「もちろん状況を見ての話にはなりますが、基本的には勝負に入っていくと思います。このオフに彼がどれだけやってきて、どれだけの上積みがあるのか。そういうものを考慮した上で、いろいろと検討していきます。彼のことなので、しっかりやってくるはずだし、当然それだけの力はあると思っています。競争の輪に入って、上を目指すことになるでしょうね」
こう語るのが、前田悠のプログラム管理を務めてきた星野順治コーディネーター(投手)だ。今季は“管理”から本格的な“競争”に進んでいくと睨んでいる。現時点で今季の開幕ローテ入りが確約されているのは有原航平投手、リバン・モイネロ投手、カーター・スチュワート・ジュニア投手の3人。残りの枠をめぐる競争に前田悠も入っていくことになる。
星野コーディネーターは前田悠のローテ入りについて、「可能性はあると思いますね」と明言する。「これは誰にでも言えることですけど、1年間回れるのかと言われると、未知数なところではあります。ただ、去年も間隔を空けながらも、あえて中6日で登板していた時もありましたし、その時もパフォーマンスは出せていたと判断しています。去年は慣れることや鍛えることにフォーカスしていたんですけど、いろんな経験をすることで順応していたので」と期待感を漂わせた。
負けん気の強い左腕は、失敗を経験するたびに練習への取り組みを変え、私生活を見直してきた。そんな一面を見てきたからこそ、星野コーディネーターの期待も自然と高まる。「力をつけた者が上に行く世界なので。1年目は当然何もわからない中で、まだ弱い部分もあった。ある程度は管理しながらやってきましたけど、それを踏まえても成長はしているので」と目を細めた。
その上で1試合だけではあったが、1軍の舞台で先発したことには大きな意味があった。「それを目標にやってきましたし、結果はどうであれ、1軍のマウンドを経験できたことはすごくプラスになったと思います。逆にこの先を考えると、(プロ初先発で)結果が出なかったことが経験値というか、モチベーションにもなったのではないでしょうかね」。星野コーディネーターが語るように、その悔しさが左腕にとって1つの発奮材料になったことは間違いない。
2月1日から始まる春季キャンプは“横一線”からのスタートとなる。「候補になる選手はたくさんいますから。置かれている立場も違うし、年齢も違う。その中で1軍の戦力を輩出していくのが僕らの役目ですね」。19歳にかける期待は大きいが、チームの連覇がかかる中で、首脳陣は冷静な目で判断を下していくことになる。「モチベーションを上げて、生き生きした感じでまた会えればなと思っています」。このオフでどれほど自分を追い込んでキャンプインするのか。前田悠はきっとたくましさを増した姿を見せてくれるだろう。