野手と比較しても苦戦する投手陣…深田課長も「売れにくいのは正直なところです」
鷹フルは、ホークスにおける“リアル”なグッズランキングを調査しました。第2回は、投手編です。取材に応じていただいたのは、事業統括本部マーケティング本部MD事業部MD企画課の深田哲平課長と、広報室広報企画課の山下紗也さん。野手と比べても、登板日が限られるだけにグッズを売るのに苦戦する投手陣。リーグ優勝に輝いた中で、ツートップの面々は“意外”なものでした。ヒントは「1軍登板はありませんでした」――。
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野手に比べて、投手は売り上げにおいても苦戦する傾向にある。先発の登板は週に1回、中継ぎも決して毎日投げるわけではない。深田課長も「野手に比べて、試合出場機会や露出も少ないですし、投手が投球する守備機会には応援歌などの応援もないので、ツインメガホンなどの応援グッズの選手展開もやや不向きです」と苦笑いで語った。魅力と個性が少しでも伝わるように、球団も工夫を凝らしている日々だ。
2015年から売り上げランキング1位に君臨するのは柳田悠岐外野手で、今季もトップの成績を収めた。投手で言えば、2024年の1位は和田毅投手だった。日米通算165勝。今季限りでユニホームを脱いだホークスのレジェンド左腕だ。「年間の売り上げで、この金額を超えれば主力級」という1つの境界線があるという。4年ぶりのリーグ優勝を成し遂げたシーズンだが、投手で唯一そのラインを超えたのが和田だった。
裏側には、球団による必死の努力があった。11月5日に引退が発表され、深田課長も「急いで我々も商品開発をして、なんとかファンフェスティバル当日に在庫販売をしました」と振り返る。今季、和田の売り上げにおいて「ほぼ半分」が引退発表以降に記録されたもの。「発表の当日は、急だったこともあり記念グッズを販売できず。新商品はないけれど、ファンは『もう和田投手としてのグッズは買えなくなるから』と、既存の商品をたくさんご購入いただけました」と、引退発表後の反響について語った。
“和田さんのグッズ”を手元に残したいというファン心理を逃すことなく、新商品は素早く開発して投入。既存品は店舗運営側と調整することで、和田のグッズをできるだけ集約し、ファンが購入しやすい環境を整え、売り上げの最大化を図ることができた。
和田に次ぐ2位の投手を問われると、深田課長は「誰だと思いますか?」と“逆質問”だ。有原航平、大津亮介、大関友久……。ヒントは「1軍登板はありませんでした」。答えは、板東湧梧だ。「アイドル級の人気は根強いです!」と驚きながら笑顔で話す。
板東も昨年比で言えば「半分くらいになりました」と1軍登板がなかった影響はやはり大きかった。山下さんも「今年はイベントのキービジュアルにも入っていなかったので、鷹の祭典や、ピンクフルデーなどのイベントアイテムが昨年より減りました」と要因を分析した。
11月24日に行われたファンフェスティバル。キービジュアルに投手で唯一選出されたのは、長谷川威展だった。山下さんは「プロモーション課が選手を選定して、グッズ課が開発する流れです」と話す。周東佑京内野手、柳町達外野手、正木智也外野手、川瀬晃内野手ら、選りすぐりの若鷹がタキシードを着てキービジュアルになった。「ファンフェスとかピンクフルデーのターゲットはどちらかといえば女性なので。ターゲット層に合いそうな選手を、意識的に選んでいます」というのも工夫の1つだ。
売り上げにおいて、板東に続いたのが東浜、そして大津。その次はリバン・モイネロだった。選手の活躍はもちろん、ルックスも売り上げには大きな影響を与える。その他に要因となるのが、キャラクターだ。深田課長も「外国人投手で、陽気にパフォーマンスしたり日本語で話したり、ファンも付きやすいんじゃないですか」という。左腕自身も最優秀防御率でタイトルホルダーにもなったのだから、当然、残した結果も売り上げに直結した。1つ1つの頑張りが積み重なって、売り上げに繋がっていくから奥が深い。
グッズ代全体で言えば「去年の同時期比で140%増でした」と明かした。「それは我々も、企画を増やしたり、選手だけじゃなくてコラボレーションをしたり、違うファン層を取り込む動きもしました。優勝の効果もあったんですけど。いろんな手数を打って、それだけの数字です」。できることは全てやった結果が140%増。球団側も、選手の魅力が届くように毎日を必死に過ごしている。
(竹村岳 / Gaku Takemura)