近年のトレンドは「推し活」…2024年に3倍以上の売り上げ増加の選手も
鷹フルは、ホークスにおける“リアル”なグッズランキングを調査しました。取材に応じたのは事業統括本部マーケティング本部MD事業部MD企画課の深田哲平課長と、広報室広報企画課の山下紗也さん。10年間にわたって売り上げトップに君臨する“絶対的王者”……。さらに、過去に類を見ないほど1位に「肉薄」した新たな挑戦者も明かされました。
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グッズの売り上げ。それは、選手の人気そのものを表すリアルな数字だ。近年の傾向について深田課長は「推し活がトレンドなので、選手個々をピックアップするようなグッズに力を入れています。毎年、選手には好きな色をヒアリングしていて、それを継続する人もいれば、変える人もいます。選手によってグッズのカラーもそれぞれ異なり、売り場も華やかになります。例えば周東選手は今年はグリーンを選ばれていました」と語る。色やシルエット、字体など、グッズの1つ1つから個性が生まれるように工夫を凝らしている。
ファン心理を表す「推し活」というトレンド。例を挙げると、今シーズンは“慶応3兄弟”のグッズが販売された。その選手にしかない切り口で押し出していくのも、工夫の1つだ。「あとは話題ですね。メディアの方々に発信してもらって、SNSを中心にファンに刺さったり、人気になってワードが先行したり、各選手が注目されることはあります。そこは我々も察知して、商品化に生かすことは常にやっています」。少しでも数字を伸ばしていくために、ファンの流行は常に把握しようと努力している。
毎年の集計は3月からスタートし、2月末で締め括られる。2024年、グッズの分野で最も売り上げを出したのは、どの選手なのか。
「毎年、柳田(悠岐)選手がトップなんですけど、今年も同じでした。相変わらず強いなという印象です。ホークスのシンボル的な選手。顔もカッコいいですし、実績もあるので、申し分ないです。オールターゲットにファンがいるからこそ、この実績なんだと思います。その次に肉薄したのが周東(佑京)選手でした」
打率.363、34本塁打、32盗塁でトリプルスリーを達成した2015年から2024年まで、トップを譲ったことはない。まさにホークスの“顔”と呼ぶにふさわしい存在だ。「揺るがないですね、圧倒的です。長く活躍されている分、固定ファンも多く、いわゆる『ギータグッズ』のニーズは非常に高いです」。売り上げ面でもチームを引っ張る頼もしさに、深田課長も唸るしかなかった。
それでも、2023年に比べれば売り上げは落ちたという。深田課長が挙げた明確な理由は2つ。1つ目は右ハムストリングを痛めて4か月の離脱を強いられたこと。もう1つは「大型記録」が無かったことだ。昨シーズンは通算250本塁打や1500安打といった節目の記録が達成されたこともあり、記念グッズが販売された。「昨年に比べると、今年は売り上げが伸び悩んだところはありました」。球団目線でも、その瞬間に生まれる“熱”を逃してはいけない。長期離脱は、売り上げという面でも大きな影響を与えた。
グッズランキングの2位に躍り出たのが周東だった。10年間トップに君臨する柳田に迫った“挑戦者”。深田課長が「ここまで肉薄したことはなかったんじゃないかな」と言うほど、ツートップの差はわずかだった。「周東選手は去年の同時期までの売り上げから1.5倍も伸ばしているんですよ」。一気に上昇気流を描いた具体的なきっかけとは何だったのか。
「(2023年の)WBCから全国的な人気は出たんですけど、今年は選手会長にもなって去年よりもグッと伸びました。活躍もあってスタメンで出る機会も多かったので。応援するファンも熱が入って、グッズをよく買っていただけた印象です」
WBCをきっかけに、周東本人もインスタグラムのフォロワーが「倍以上」になったと明かしていた。世界一メンバーとなったことが、ファンの“新規開拓”に大きな影響をもたらしたことは間違いない。グッズの面でも「去年くらいから主力級の活躍を見せてくれたことで、高い売り上げ実績が出るようになりました」と、まさに人気はうなぎ上りだという。
その他に、今季グッと売り上げを伸ばした選手は誰だったのか。
「ホークスは元々、長く活躍している選手が多いので、あまり構図は変わらないです。今宮(健太)選手だったり、中村晃選手や甲斐(拓也)選手。そこに入り込むほどではないものの、柳町(達)選手、正木(智也)選手、川瀬(晃)選手は伸び率でいうと、前年の2倍以上の売り上げがありました。周東選手の1.5倍増に対して、先ほどの3人は2倍以上。川瀬選手においては3倍以上と、今年は特に若手選手の飛躍を感じられた1年でした」
小久保裕紀監督が若手を積極的に起用した影響もあり、数々のニュースターが売り上げを伸ばしたシーズンだった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)