予言された今季の成績…「10勝10敗じゃ寂しい」 大津が忘れられない言葉、周東の強烈イジリ

ソフトバンク・大津亮介【写真:冨田成美】
ソフトバンク・大津亮介【写真:冨田成美】

指揮官が「ワーストゲーム」と振り返った一戦…明かされた試合後のやりとり

 鷹フルがお送りする大津亮介投手の単独インタビュー。3日連載掲載の最終回、テーマは「今季印象に残った“言葉”」です。7勝目をかけて臨んだ7月6日の楽天戦で敗戦投手に。小久保裕紀監督が「ワーストのゲームやったね」と嘆いた試合後、首脳陣からの言葉をどのように受け止めたのか――。その記事を読んだ周東佑京内野手から“イジられ続けた”という裏話にも迫ります。

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 先発投手として迎えた初めてのシーズンで7勝7敗、防御率2.87の成績を残した。「中継ぎから先発になって、まずはローテーションに入ることが目標だったので。そこはクリアできてよかったと思っています」と胸を張った。

 そんな右腕が今季を振り返ると、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)とのやりとりがいくつも思い出されるという。「たぶん、ホークスの中で僕が一番話し合いをしました」と言うほど、重ねたコミュニケーション。その中でも強烈な印象を残した言葉があった。

 倉野コーチと会話をする時は、必ず個室に呼ばれた。「それはもう恐ろしい……」と苦笑いするほどの緊張感と雰囲気。「たくさん個人ミーティングをしました。めちゃくちゃ厳しい言葉を、ずっと言われていました。でも、それが愛情だと。僕のことを思って言ってくれていると捉えて、素直に受け入れていました」と振り返る。

 幾度も投げつけられた厳しい言葉。それでも右腕が“愛情”と感じられたのには理由がある。「ただ単に怒っているんじゃなくて、僕が納得するような言葉をチョイスしてくれていました。『考えてくれているんだな』って。怒られながら、堪えながら、聞いていました」。言葉の端々に感じる優しさからは、期待を感じたという。

 3敗目を喫した6月12日のヤクルト戦(みずほPayPayドーム)。この日の試合後にも厳しい言葉があった。「戦う姿勢を感じられなかったのが残念だったし、この姿ではマウンドに上がれないよという話はしました」。取材対応した倉野コーチは、右腕とのやり取りを明かしていた。高卒1年目で初スタメンだった鈴木にスライダーを左前に運ばれたことが、首脳陣の目には“隙”と映っていた。「それはありましたね」と、自身も思い当たることがあった。

 7月6日の楽天戦(同)は、6回4失点で4敗目を喫した。チームが2連敗で迎えた大事な試合だったが、本来の投球ができずにゲームを作ることができなかった。その試合後にも、倉野コーチからは「まだまだスタミナ面も精神面も含めて、本当の強さではないんじゃないか」と耳が痛くなる言葉をかけられた。

 報道陣に対しても「ここを乗り越えないと10勝10敗のピッチャーになってしまうんじゃないかと。15勝5敗のようなピッチャーを目指してほしいので。10勝10敗じゃ寂しいなと思います」と語った倉野コーチ。大津は翌日の記事でこのコメントを知ったが、自らを見つめ直すきっかけになった。

大津亮介、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター、甲斐拓也(左から)【写真:小池義弘】
大津亮介、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター、甲斐拓也(左から)【写真:小池義弘】

 倉野コーチのコメントを読んでいたのは大津だけではなかった。「(周東)佑京さんにずっとイジられました。『10勝10敗のピッチャーや』って(笑)」。激励の意味合いもあったのだろうが、右腕は真正面から受け止めた。「10勝10敗だと意味がない。本当におっしゃる通りだと思いました」。それほど胸に深く刻まれた言葉でもあった。

 結果的には7勝7敗の成績。奇しくも倉野コーチの“予言”に近い形でシーズンを終えた右腕だが、同コーチは先発1年目を終えた25歳を称えた。「よくやってくれたと思います。前半戦を支えてくれたうちの1人として、間違いなく大津も入るので。後半は失速という形になりましたけど、(10月4日のロッテ戦で)最後に勝てたのは『よかったね』と、本人にも話しました。気持ち的にも6勝7敗と7勝7敗は違う。僕自身も嬉しかったです」。

「いろんな経験をされている方がシーズン中の僕を見て言われたことなので、そうならないように。それで終わったらもったいないなと思って。7勝7敗でしたけど、(来季は)そうならないようにしないといけないなと思いました」。大津にとって成績以上に悔しさを感じるシーズンでもあった。来季は倉野コーチが願う15勝を挙げ、一緒に喜びを分かち合いたい。

(飯田航平 / Kohei Iida)