今宮健太の言葉に変化が…「嫌われる」を体現 上林誠知目線で語る、長崎での熱いゲキ

中日・上林誠知との再会を果たしたソフトバンク・今宮健太(右)【写真:竹村岳】
中日・上林誠知との再会を果たしたソフトバンク・今宮健太(右)【写真:竹村岳】

8月28日のオリックス戦…大乱調の津森宥紀に今宮健太がかけたゲキ

 鷹フルでは前ソフトバンクで、現在は中日でプレーする上林誠知外野手の単独インタビューを行いました。3日連続掲載の第2弾、テーマは「今宮健太への思い」です。ホークスがリーグ優勝を掴み取った2024年。かつての古巣を、どんな目線で見守っていたのでしょうか? 印象的だと挙げたのは、今宮健太内野手の姿でした。8月28日のオリックス戦(長崎)で、チームリーダーが飛ばしたゲキ。チームメートとして過ごした時間が長かったからこそ、理解できる部分がありました。

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 2023年オフにソフトバンクから戦力外通告を受け、中日に移籍した。2年ぶりの本塁打を記録したものの、最終的には46試合に出場して打率.191、1本塁打、3打点。「思い通りにはいかなかったというか。環境が変わって、どう変わるのか期待をしていた部分もあったんですけど。うまく噛み合わなかったというか、そういう感じでした」と、反省しながら振り返った。

 6月4~6日には、ソフトバンクと中日による交流戦が行われた。プロ入りから10年間身にまとったものとは違うユニホームを着た上林は、久々にホークスナインと再会。「不思議な感じというか。敵だけど、味方みたいな感じはありましたね。来年は自分が(みずほPayPayドームに)行くので。違った感じになると思います」と微笑む。圧倒的な強さで、4年ぶりのリーグ優勝に輝いた古巣の戦いぶりにも刺激を受けてきた。「常にそういうチームであってほしいという気持ちで見ていました。日本シリーズでやって、勝ちたいですよね」。

 ホークス時代には多くのチームメートと時間を過ごしてきた。その中で、上林は「一緒にずっとやってきたメンバー、柳田(悠岐)さん、(中村)晃さん、健太さん……。その人たちには特別な思いがありますね」と、3人の名前を挙げた。自分自身も中日での戦いの日々に精いっぱいだったが、外からホークスを見守った中で印象に残ったのが今宮の姿だった。

「今年だけじゃないですけどね。近年見ていて、口から出る言葉が変わってきたなっていう印象はありますね」

 上林が挙げたのは8月28日のオリックス戦だった。1点リードの7回2死満塁から登板した津森宥紀投手が3連続押し出し四死球を与え、結果的にチームも敗れた。今宮はマウンドに向かい、右腕に対して「もっと堂々と投げろ」とゲキを飛ばした。この出来事は上林にとっても印象的だった。「何を言っているのかはわからないですけど、マウンドに行ったことは知っていました。表情とか雰囲気で(今宮が伝えたかったことが)自分はわかります」。

 このタイミングだからこそ励ますのではなく、厳しい口調で右腕に言葉をかけた今宮の意図が伝わってきたという。「長年やってきましたし、それは自分の“特殊能力”です」。後輩の目線で今宮を見てきたから、あの行動の真意も理解できる。「健太さんなら(年齢が)上の人にも下の人にも言えるだろうし。リーダーっていうのは、多少嫌われる部分も必要だったりすると思います。それを体現できているんじゃないですか」。チームを離れても、改めてキャプテンシーを感じさせる出来事だった。

 中日に移籍後、初めてのシーズンを終えた。上林は新天地で誰と過ごす時間が長かったのか。「もともとは群れるタイプじゃないですから。いないっちゃいないんですけどね」と照れ笑いしながら、名前を挙げたのが岡林勇希外野手だった。「あいつも同じ外野で、結構“かまってちゃん”なので。絡むことは多いですね」。

 上林が初めて規定打席に到達したのは、高卒4年目の2017年だった。岡林は高卒3年目の2022年に161安打を放ち、最多安打のタイトルを獲得。一気に台頭した。同じ右投げ左打ちの外野手で、20代前半からチームにとって欠かせない存在となった姿は自分にも重なる。「いろんな感情でやっていると思いますけど、あいつも若くして(試合に)出ているので。自分も刺激をもらいながらやるしかないですね」。来季は井上一樹新監督のもと、再発進するドラゴンズ。2人の“バヤシ”が引っ張ってくれるはずだ。

 ホークスのことを聞くと、今もスラスラと具体的な言葉が返ってくる。「10年もいれば、そりゃ好きになりますよ」。福岡は今も自分の胸の中でしっかりと存在している。「ただ、自分もこのままじゃ終われないので。このまま終わる男ではないです。ちゃんと復活しますよ」。上林はまたクールに笑った。

(竹村岳 / Gaku Takemura)