「お前が言ったんだからな」 山川穂高が受け取った覚悟…リチャード激白「変わりたい」

ソフトバンク・山川穂高とリチャード【写真:竹村岳、冨田成美】
ソフトバンク・山川穂高とリチャード【写真:竹村岳、冨田成美】

現在は山川穂高との自主トレ…明かされた一部「練習がハードすぎて」

 ソフトバンクのリチャード内野手が6日、みずほPayPayドームで契約更改交渉に臨んだ。現状維持の1000万円でサインをし「覚悟ができました」と胸中を明かした。現在、“師匠”の山川穂高内野手との自主トレを行なっている。毎年のようにオフをともに過ごす2人だが、今年ならではの決意を“弟子”が見せている。

 11月22日に1度目の交渉に臨み、サインを保留した。70分にも及ぶ話し合いで決着はつかず。12月6日、2度目の交渉も80分を超え「非常にいい会話ができました。覚悟ができました」と、会見場に姿を見せた。決意を固めたからには、心身はすでに2025年に向かっている。ハードなトレーニングの一部が明かされた。

 リチャードにとって2024年は、初めて山川とチームメートになったシーズンだった。全143試合に出場し、34発を放った主砲に「練習通りというか、すごさというより、感心の方が大きい。ああいう練習をずっとやっているから試合で打てるんだなって。刺激は非常に大きかったです」。練習での取り組みが、試合で表現されていることを理解できた。偉大さを改めて知ったからこそ、自ら自主トレを申し出た。厳しい日々を過ごす今、山川からこんなことを言われた。

「お前が変わりたいって言ったんだからな」

 リチャードは5年連続でウエスタン・リーグの本塁打王を獲得している。1軍では開花させられずにいるが、大きなポテンシャルを備えているのは間違いない。現在、具体的に改善しようとしているのはスイング軌道。少しでも「率」が上がるように、毎日付きっきりでの練習に励んでいる。山川も「僕がこれだけリッチーにしっかり教えているのって、自主トレの1年目以来ですよ。それ以外の年は、別にそんなには教えていなかったですから」と明かす。

 出会いは、リチャードが1年目を終えたオフだった。知人からの紹介を経て、山川と1週間ほど自主トレを行うことになったのがきっかけだ。その後も毎年のように沖縄などでトレーニングをともにし、山川から技術も知識も得ようとしてきた。「1年目以来」というほど、長い時間をともに過ごしながら愛弟子を成長させようとしているのも、「変わりたい」という熱意を受け取ったからだ。

「本当にやばいです……。今年は初心に戻って『1年目の時みたいにしてください』って言っていますし、いっぱいキツいことをさせてもらっています」とリチャードも苦笑いする。山川も、「たとえば僕がロングティーで100球、柵を越えたら終わりなら、リッチーは300球ですよ。300球ってことは、最低でも300回はフルスイングしないといけない。それが600、900回とかになるかもしれないですけど。それくらいやらないといけないですよ」。決意を受け取ったのだから、師としても絶対に手は抜かない。ハードな練習メニューを語る表情は、真顔だった。

 食生活の改善も、テーマの1つ。「普段、好きなように食べているのが恵まれているなと思うくらいです。最初はフルーツだけを食べていたんですけど、それだと練習がハードすぎて立ちくらみするし。救急車(119番)もケータイに入れたりしていたので、タンパク質はOKになりました。基本は赤身です」という。来年1月は、沖縄の久米島で自主トレを行う。「ひたすら守って、ひたすら打って、ひたすら走ると思います」と、一日の全てが野球に繋がるように鍛錬を積む。

「もちろん自分の中でこれをやりたいというのはある。その中で山川さんに全て(メニューを)渡して、ついていくというのをやっているので。僕が情けないことをしているからだと思うんですけど、毎年いろんな人からアドバイスをいただく機会があって、迷いに入っていくことが多い。絞るという言い方が正しいのかわからないですけど、山川さんにお願いして、心中するというか、それでダメなら仕方ないと思えるように。覚悟を持ってやりたいです」

 会見の最後に、覚悟の“真意”を問われて、こう答えた。「自分を変えたいって気持ちもありますけど、もっと上手くなりたいとか、ホームランを打ちたいって気持ちが大きいです」。誰よりも多く、誰よりも遠くへアーチを描きたい。今はただ必死に、山川の圧倒的な練習についていくだけだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)