ドラ1入団が味わった「地獄」 戦力外通告で一変した環境…育成降格で感じた“恥辱”

契約更改交渉に臨んだソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】
契約更改交渉に臨んだソフトバンク・佐藤直樹【写真:竹村岳】

鷹・佐藤直樹が契約更改…昨オフには育成再契約を経験

 3桁という“地獄”から這い上がった1年だった。ソフトバンクの佐藤直樹外野手が27日、みずほPayPayドームで契約更改交渉に臨んだ。100万円アップの1400万円でサイン。2024年シーズンを「育成から支配下になって、今までとは違った取り組みのところを評価していただきました。去年までとは違う形で、新しい発見もありましたし、楽しく野球ができました」と振り返る。(金額は推定)

 昨年10月24日、球団から戦力外通告を受けた。移籍も含めて悩んだ結果、ソフトバンクとの育成再契約を選択。背番号は新たに138番となった。「今年2月のキャンプから3桁を背負って、恥ずかしいじゃないですけど。支配下とは全然違う扱われ方をしたので。なんとしても2桁に戻りたい思いでした」。2019年のドラフト1位入団から、なかなか結果を出せず、落ちるところまで突き落とされてしまった。

 支配下時代との違いは、さまざまな面で実感した。「選手が集まっている中で『支配下だけ残ってください』って言われたり。そういう時に『ああ、俺支配下ちゃうんや』っていうのは思いました……。野球以外でも違いを感じることは多かったです」。2月は、多くの人がキャンプ地に足を運ぶ“球春”。ファンからの視線についても「前を歩く時は恥ずかしい気持ちがありました」と、率直な思いを打ち明けた。

6月1日に支配下登録…打撃面が改善された要因は「野球を楽しめている」

 今シーズンはウエスタン・リーグで打率.343を記録し、6月1日に支配下登録された。課題だった打撃面を大きく改善できた理由に「メンタル的なところが大きいです。今までなら1軍で試合に出たら緊張して自分のプレーができなかったですけど、今年は支配下に上がった時から野球を楽しめていると思います」と分析する。全てを失ってしまったからこそ、大好きな野球に少しずつ没頭できるようになっていった。

「1回、去年クビになった。捨てるものがないというか、頑張る気持ちはあったんですけど、“どうなってもいいわ”くらいで吹っ切れた部分がありました。シーズンの後半は、1軍に上がって打席をもらって、結果を気にしてしまうようになってきていたので。そこは反省点ですけど」

 戦力外通告から1年が経ち、2025年の契約を結んだ。仕事を失うかもしれないという昨年の出来事は「自分の人生においても、いい経験だったなと思います」と受け止めている。来年1月は2年連続で、柳田悠岐外野手のもとで自主トレを行う。「(昨オフは)育成ではありますけど、戦力外ですから。これ以上の“地獄”はないくらいですし、あとは這い上がるだけなので。あとは楽しんでやるしかないですね」。いつもは口下手な佐藤直だが、力強い決意だけが伝わってきた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)