本気で考え始めた「40歳まで現役」 家族のためにも…周東佑京が授かった“新しい命”

ソフトバンク・周東佑京【写真:冨田成美】
ソフトバンク・周東佑京【写真:冨田成美】

鷹フルの単独インタビュー最終回…1人の父親として抱くのは大きな夢

 鷹フルがお送りする周東佑京内野手の単独インタビュー。4日連続掲載の最終回、テーマは「家族の存在」です。「自慢できる父親でありたい」。本格的に考え始めている今後の現役生活について、ビジョンを語ります。スピードスターから、選手として“スタイルチェンジ”する可能性も……。また、今年には“新しい命”を授かっていたことも明かしました。

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 左膝の痛みを抱えながらも、9月30日に出場選手登録を抹消されるまで、1軍で戦い続けた。123試合に出場し、115安打を記録。打率.269、2本塁打、26打点で、41盗塁は自身3度目のタイトルにも繋がった。「特に終盤戦はキツかったです」と、満身創痍の中で駆け抜けたシーズン。自分自身の価値観にも変化が生まれていた。これまでは「壊れてもいい」と迷いなく言い切っていたが、今は頭の片隅に家族の存在がある。

「壊れたくはないです。まだまだこれから先も野球を続けたいし、壊れることはないように、できる限りのことをやりたいです」

 来年2月には29歳になる。目の前の状況で必死にプレーすることも周東らしさではあったが、30代も見えてきた今、本格的に“先”を見据えなければならないと、言い切る。

「家族のためにというのもありますし、僕自身がもっと長く現役をやりたいと思っています。(ホークスに)入った頃は30歳までできたらいいなと思っていましたけど、もう再来年には30歳になりますし。40歳までやりたいとか、目標も変わってくるものなのかなと思います」

 日本シリーズも終わり、11月9日には左膝の手術を受けた。1年でも長くプロ野球選手でいるために、下した決断でもあった。「何もしなくても来年はプレーできると思うんですけど。膝に関しては、今年と同じ状況で来年もやるのはしんどいです、気持ちの問題的に。絶対にどこかで(気持ちが)折れちゃうと思ったので、だったら1回やれることをやりましょうという話です」と明かした。不安を消して、もう1度全力で走るためにも左膝にメスを入れた。

 通算195盗塁で、これまで3度のタイトルを獲得した。足こそが最大の“商売道具”だ。一方で、もし足という武器を失ってしまったら――。ロッテの荻野貴司外野手が2021年に24盗塁をマークし、36歳でタイトルを獲得したのが球界における最年長記録。スピードスターの“寿命”は決して長くはないと、誰よりも周東が自覚している。

「年も年ですし。僕のタイプで長く(現役が)できる選手は少ないじゃないですか。そこは先を見据えてやらないと、野球人生は長くできない。先のことを考えることは多くなりましたね」

 昨オフに中日へ移籍した上林誠知外野手も、同学年の周東について「年齢的にも怪我が増えてくる」と話していた。左膝の痛みに苦しんだ2024年。周東も「そこは思いますね。現役で、できても33歳までかなとか思っちゃいますし。そこを1年でも2年でも伸ばすためにどうするのかは考えないといけない」と、盟友の言葉に同調する。体の変化をしっかりと認識しながら、プロの世界での“生き方”を常に模索しないといけない。

「このまま走るタイプでどこまでいけるのか。シフトチェンジをしないといけない時は絶対に来ると思うので、その準備もしないといけないです。(具体的に)考えていることはありますけど。まだまだ走れるうちはとは思っていますし、それが大事だと思います。自分の価値をどんどん上げていかないと、長いことはできないと思いますから」

 家族のために長く現役を続けたい――。その思いが強くなったのは、“新しい命”を授かったからだ。今年の3月、第2子となる女児が誕生した。出産に立ち会ったといい、「全然寝られないです。今が一番うるさいので、妻が困っています」と笑顔で明かす。プロ野球選手として、1人の父親として抱く夢は「野球をやっているところは見せたいですね。子どもが覚えてくれるまでは現役をやりたいなと思いますし、自慢できる父親でありたいです」。母との別れ、リーグ優勝と激動の2024年を戦い終えた。大切な家族と一緒に、周東佑京には笑っていてほしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)