「“かわいそう”は仲田に失礼」 戦力外に涙…川村&緒方が明かした胸中とは?

ソフトバンク・川村友斗、仲田慶介、緒方理貢(左から)【写真:竹村岳】 
ソフトバンク・川村友斗、仲田慶介、緒方理貢(左から)【写真:竹村岳】 

4日に発表された7選手の戦力外…仲田は涙して「死に物狂いでやってきた」

 同じタイミングで「2桁」を掴んだ。必死なのは今も同じだ。「“かわいそう”というのは、失礼だと思うので……」。ともに戦ってきた仲間だからこそ、口にしたのは偽りのない本音だった。

 ソフトバンクは4日、7選手に対して来季の支配下選手契約を結ばないことを発表した。その中の1人が、仲田慶介内野手だった。2021年育成ドラフト14位でプロ入り。同年のドラフト会議で指名された全128人中、128番目で名前を呼ばれた。福岡大大濠高、福岡大と進んだ男は、生粋のホークスファンとしても生きてきた。球団から打診されたのは来季の育成再契約だった。「育成時代は毎日、本当に死に物狂いでやっていたので。今回またこのタイミングで育成に戻る……。あの時と同じ気持ちでは正直、今はできないです」と大粒の涙を流した。

 仲田と同じタイミングで2桁背番号を掴み取ったのが、川村友斗外野手と緒方理貢外野手だ。3人は、今年2月の春季キャンプからA組に選出され、それぞれが競うように結果を残してきた。3月19日に支配下登録され、「育成三銃士」とも呼ばれた。そのうちの1人である仲田が告げられた戦力外通告。どんな心境を抱いたのか。まずは川村が明かした。

「ビックリしたのが一番です」と第一声。日本シリーズでの敗退が決まった3日、試合後も眠れずにいたという。「何か(一報)が出るかもしれないと思っていました」。SNSで目に飛び込んできたのが、ホークスの戦力外についての情報。川村にとって仲田は同期入団で同学年だけに、「僕も紙一重というか、そういう立場だったんだなと感じました」と危機感を覚えずにはいられなかった。

 開幕前の支配下登録をつかみ取ろうと、2月中は必死だった。川村は「枠がある世界ですから。春キャンプから3月にかけては、今年一番気を張っていました。あの2人(仲田、緒方)が練習していたり、ヒットを打つと『僕も負けていられない』って思いがありました」という。「3人とも支配下になるだなんて思っていなかったので。A組スタートというのも同じでしたし、刺激はもらっていました」と、強烈な“競争意識”があったことを明かした。

 仲田は誰よりも練習する“努力の人”だ。「育成の時から、姿というのは変わらなかったです。今まで通りでした」。今シーズン、ともに1軍にいた中で川村の目に映ったのは、やるべき準備を徹底していた仲田の姿だった。

 支配下登録からわずか7か月で戦力構想を外れた仲田が流した涙を見て、川村は胸中を激白した。

「なんですかね……。でも、“かわいそう”という感情は一切ないです。それは仲田に対しても失礼だと思うので」。

 プロ野球は競争の世界。1軍で居場所を作ろうと必死に努力する姿を、誰よりも見てきた。プロならば、自分だけの力で生き残らねばならない。だからこそ、同情といった気持ちは芽生えなかった。「どうなるか本当にわからないですし、話せることもあんまりないんですけど……」。かけるべき言葉も、なかなか見つからない。「まだ連絡とかできていないんですけど、1回会いたいですね」。正木智也外野手とともに、ある計画を立てていることを明かした。

「同期でご飯に行こうって話もしているんです。(発案しているのは)僕と正木で、『1回ご飯に行こうか?』『それなら同期みんな一緒に行きたい』と。どうなるか、まだわからないんですけど。瑞樹(三浦)とか、佐藤琢磨とか、仲田もいますし。1回、勇(野村)さんに聞いてみようってなったんですけど、『お前らが計画せい!』って言われました」

 緒方も、仲田の戦力外に「他人事じゃないので。そういう世界ですから、僕にも言えることです」と繰り返す。日本シリーズから一夜明けた4日に一報を耳にした。川村と同じく、2月は自分のことで精いっぱいだったという。「もちろん意識した存在ですし、結果的に3人で(支配下に)上がりましたけど、余裕はなかったですね」と振り返る。

「サインください、仲田くん!」。春季キャンプ中は、ファンからも頻繁に間違えられたという緒方。プロ野球選手なら誰もが自分の個性を発揮して、実績を残していかないといけない。「育成三銃士」という呼称について、緒方はキッパリと思いを口にした。「ありがたいことですし、呼ばれるのが嫌だとかはないんですけど。それってファンの人とか、メディアの人が取り上げているだけ。自分的には何も意識はしていないです。ただ、いつまでも“育成”がつくのは嫌ですね」。

 3人で一緒に2桁になったからこそ、認知度が高まったこともわかっている。だからこそ、3人という括りから早く脱却したいというのも、緒方の本音だった。競争の世界。支配下になってからも、「三銃士」の戦いは続いている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)