栗原陵矢の単独インタビュー第2弾…ロッカーで柳田悠岐と交わした会話
日本シリーズでDeNAに敗れ、2024年ホークスの戦いは幕を閉じました。鷹フルは栗原陵矢内野手に単独でインタビュー。全3回掲載の第2回は、新たに芽生えたリーダーシップについて焦点を当てました。柳田悠岐外野手が離脱した直後、偉大な先輩と交わした“約束”がありました。引っ張っていくのは「僕と、佑京さん」――。
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2020年に17本塁打を放ち、栗原は1軍での定位置を築き始めた。翌2021年にはキャリアハイの21本塁打をマーク。東京五輪の日本代表にも選出され、確実にチームを代表する1人となった。4年ぶりのリーグ優勝を掴んだ今シーズン。春先は「部屋からも出たくない」ほどの苦悩を味わった。今季が10年目。立場がこれまでと全く違うことは、栗原自身が一番、理解していた。
「以前は自分の結果だけでよかった。自分がやることを思い切ってやって、失敗しても『先輩たち、カバーしてください!』って感じでしたけど、なかなか(今年は)そういうわけにはいかない。立場が変わって、いろいろと自分の気持ちも変わったかなと思います」
レギュラーシーズンの中で、大きな分岐点となったのが5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)だという。柳田が右ハムストリングを痛め、長期離脱を余儀なくされた試合だ。「そこは大きかったですね。ギーさんが怪我をされた時の気持ちの変化は大きかったと思います」。栗原自身もチームを背負うと意気込んで迎えた2024年。柳田の負傷には、言葉を失ってしまった。
「なんと言っても柳田悠岐という人の存在は大きいですし、誰が見てもスーパースター。その方がいなくなるのは自分としても痛かったですし、ファンの皆さんも『うわぁ』となられたと思うんですけど。これからホークスを引っ張っていきたいという気持ちを持ちながら、『佑京さんと……』って話をしました」
6月1日、柳田はみずほPayPayドームを訪れた。栗原は真っ先にロッカーまで会いに行ったが、偉大なスターがつぶやいたのは「無理やな」の一言。長期離脱を知らされた。栗原も当然、心配をかけたくはなかった。「僕と佑京さんで頑張ります」と、真っすぐに目を見て伝えた。「自分の力でなんとか(したい)とは思いました」。4月は周囲が心配するほど表情が暗かった栗原に、スイッチが入った瞬間だった。
「(シーズンで印象に残っているシーンの)一番はギーさんの怪我ですね。監督が全員を集めてミーティングをした時じゃないですかね。いないことをどう思っても、いないですし。『ギーさんがおったらな』って話をしたこともないです。しっかりといるメンバーで戦う。その中でも自分が引っ張っていけたらって気持ちではいました」
周東は今季から選手会長となった。その姿に栗原も感じるものがあった。「いろいろと話はしました。結果はもちろん大事ですし、立場的にも選手会長ですから。チームを引っ張っていく立場。そこは苦労されていると思いました」。周東も「結局、あいつ(栗原)が1年間、苦しい時期もあった中でサードのポジションをやってくれたから優勝できたというのはあります。そこは本人の自覚もあったと思います」と、支え合いながらチームの先頭に立ってきた。
忘れられない瞬間がある。6月8日のDeNA戦(横浜)。5回無死で打席に立った周東は投ゴロで一塁を駆け抜けると、セーフになったことに気付かずにフェアゾーンを通ってベンチに戻ろうとした。結果は、タッチアウト。小久保裕紀監督からも「ありえないプレーを起こしている」と厳しく言及された。
指揮官の言葉も含め、このシーンは栗原の記憶にも色濃く残っているという。「佑京さんの走塁があって、その後のミーティングでもいろんな話をされて。別に油断があったわけではないですけど、そういうプレーが出てしまったので」。自分自身にとっても、普段の言動からどうするべきか、考えさせられたシーズンだった。「プレーのミスっていうよりも、振る舞いであったりとか。そういう意味でも、できたことはあったと思います」。自問自答は絶対にやめなかった。
栗原は今季で10年目を迎え、周東は選手会長に。後輩からも見られる立場について、周東は「イライラすることはありましたけど、投げやりにならないようにしていました。(今宮)健太さんとも話をしながら。自分でもそういう気持ちを保っていましたけど、周りにも保ってもらいながらですね」という。「結果が出ている、出ていないは関係なく、そういう姿を見せない。クリも含めて、簡単にチームから抜けないようにとは思っていました」。周東が左膝の違和感を抱えながらも自身初の規定打席に達したのは、主力としての意地とプライドだった。
2人で一緒に、1軍の大きな柱になろうと手を取り合ってきた。その誓いは現実となり、チームの中心としてリーグ優勝に貢献した2024年。栗原も“特別”だと感じていた。「チームをよくしようという思いは、これまでと全然違うと思います」。周東佑京と、栗原陵矢。次代のホークスを背負っていく2人にとって、これ以上ない経験を積んだ2024年だった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)