近藤のコンディションは一進一退だった…回復を感じ始めたのは「ここ5日くらい」
ギータの「好きな打順」が明かされる。本人も驚きの起用だった。“ぶっつけ本番”だった2人の起用は、どのようにして決まったのか?
ソフトバンクは16日、みずほPayPayドームで行われた「2024 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ初戦に臨んだ。日本ハムに5-2で勝利し、アドバンテージの1勝分も含めて、対戦成績を2勝0敗とした。ファンを驚かせたのが、柳田悠岐外野手を1番に置いた采配と、近藤健介外野手のスタメン起用。首脳陣が明かす舞台裏に、主力選手たちの頼もしさが詰まっていた。
初回無死で打席に入った柳田は、低めの変化球に対して空振り三振に終わった。4打数無安打で、8回の守備から途中交代した。近藤は2回1死で中堅フェンス直撃の二塁打でチャンスメーク。その後、正木智也外野手の先制適時打を呼び込んだ。2人がスタメンに並んだのは、5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)以来。柳田が右ハムストリングを痛めて、長期離脱となったあの日だ。絶対に落とせないCS初戦で主力が揃い踏み、会心の勝利をおさめた。
近藤が負傷したのは、9月16日のオリックス戦(京セラドーム)だった。二盗を試みた際に右足首を痛めて、翌17日に登録抹消された。診断結果は「捻挫」。リーグ優勝まで、あと一歩というところで離脱を余儀なくされた。9月30日から1軍に帯同して、慎重に状態を見極めてきたが、近藤の感覚では一進一退だったという。どのようにスタメン起用が決まったのか? 奈良原浩ヘッドコーチが、近藤とのやり取りを明かした。
「本人が走った感じで『いける』と言ったので」
この日の試合前練習が最終確認だった。午後4時に発表される公示に備えて、ギリギリまで見極めるつもりだったが、ベースランニングする姿を見て決めた。試合前の調整を一通り終えて、ベンチ裏に消えていく。「打つ方じゃなくて走る方で、本人もいけるなというところでした。トレーナーからの報告を受けて、最終決定しました」と、スタメン起用にいたった経緯を明かした。
2回に二塁打を放った際には、ベースランニングも全力で行っていた。近藤自身も「意外といけたかなと思います」と感触を振り返る。「ここ5日くらいで走る方が上がってきた。バッティングはもともと問題なかったので、いけると思いました」と出場を志願した。先制点に繋がる一打となり、「当然、(チームに)迷惑がかかったり、足を引っ張るようなら自分で判断しないといけないと思っていました。最後は監督、コーチの判断だと思いますけど、ある程度のところ(状態)までは来られました」と、右足首を見つめてうなずいた。
9月16日に負傷して以降、患部の状態について「強度が上がると次の日に反動が出たり。今日は(痛みが)出ていなかったので、それはよかったと思います」と、一進一退だったことを認めていた。グラウンドに立てば全力でプレーするだけだが、「不安はありますけどね、もちろん。今後に響いても……。監督もそこを一番心配してくださっていた。自分で出ると決めたのなら、そこ(不安)も頭に入れつつになると思いますけど、気合を入れていきたいです」。不安を受け入れ、覚悟も決めた。1か月間、治療に集中してきたからこそ、大一番で戻ってこられた。
柳田も1番起用を知ったのは、試合前だったという。「僕もビックリしました。(オーダーが書かれた)白板(はくばん)を見て知りました。打てなかったですけど、チームが勝ってよかったです」と明かす。1番については「好きな打順です」ときっぱり。「カッコいいから……(笑)。なんか、自分のイメージなんですけど」と、笑いながら理由を明かした。快音を響かせることはできなかったが、文字通り柳田が先頭にいることがチームにとっても大きな意味を持つ。
村上隆行打撃コーチは「スタメン発表の時に球場が湧いていましたね。あれを最初から狙っていました」と胸を張る。小久保監督とも意見を交わして、柳田の1番起用を決めたといい、「短期決戦なので、攻めなきゃいけない。(試合当日よりも)前の段階で、監督にもちょっと相談していたんです。『1番、柳田で行きたいんですけど』って。『面白いですね』となったので。近藤次第でもあったんですけど」と裏側を語った。レギュラーシーズンでいえば2018年7月10日の日本ハム戦(東京ドーム)以来の1番起用だったが、首脳陣の勇気も、チームの勝利に繋がった。
近藤が「(柳田さんの存在は)いるのといないのとでは、安心感が違う」と言えば、柳田も「勝つだけです。何もしていないですけど、勝ってよかったです」と話した。離脱者が生まれながらも、必死に戦い、リーグ優勝を飾った。ポストシーズンという大一番で、ついにベストメンバーが出揃った。
(竹村岳 / Gaku Takemura)