チームリーダーが値千金の逆転3点打「負けを消せたことは非常によかった」
リーダーの一打がチームを、そして何よりもルーキー左腕を救った。1日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。4点ビハインドで迎えた5回に2点を返し、なお2死満塁の好機で打席には今宮健太内野手。鈴木のツーシームを右中間へはじき返した打球が走者一掃の3点適時二塁打となり、この回一挙5得点で逆転に成功した。
一時は6点差をつけられながらも、それを跳ね返す力が今季のホークスにはある。「0-6になったときは『やべぇな』ってなりましたけど。でもチームとしてもしっかりとつないだ中で5点を取って、そこから逆転できたというのは、やっぱり今年を象徴するというか……。そういうチームだったのかなと思います」。強力打線の一員として戦ってきた男は胸を張った。
チームの勝利以上に大きかったのは、プロ初登板で洗礼を浴びた19歳の黒星を消したことだ。ドラフト1位ルーキーの前田悠伍投手が3回までに6点を失って降板。敗色濃厚の展開を一振りでひっくり返した。「結果的に前田(悠)の負けが消えたことは非常によかったなと思いますし。打った瞬間はいろいろとほっとしました」。そう振り返ったチームリーダーの目に映った左腕の姿は、結果とは正反対の印象だったという。
「度胸は間違いなくあると思いますね。きょうに関しては、ボールが真ん中真ん中に寄ってしまったところを痛打されてしまったので。自分の投げたいように投げられたとは思っていないでしょうけど。1年目からこの舞台に立って投げるというのは改めてすごいなと感じましたし、この悔しい思いというのを必ずプラスに変えられる選手だと思うので」
遊撃のポジションから見守った今宮が驚いたのは、ルーキー左腕の堂々たる投げっぷりだった。初回はわずか2分、6球で3者凡退に抑える完璧な立ち上がり。2回以降は集中打を浴びたが、マウンド上でうつむくことはなかった。
ベンチで左腕に声をかけた今宮が明かしたのは、19歳らしからぬ強心臓ぶりだった。「『(初登板)どうだった? 緊張した?』みたいに聞いたら、『緊張はしなかったです』って。本当に度胸があるんだなと思いましたし、その中でも(前田悠の)悔しさは感じましたね」。
19歳の姿を見て思い返したのは13年前、2011年のことだった。前田悠と同じくドラフト1位でプロの世界に飛び込んだ今宮も、プロ2年目の19歳でデビューを果たした。
「自分が1軍に上がってきたときはあたふたあたふたして。本当に『どうしよう、どうしよう』って考えたんですけどね」。だからこそ、左腕の姿に目を丸くした。「いやー、すごいですね。どっしりしてます。うらやましいですね」。思わず“嫉妬”してしまうほどの落ち着きぶりだった。
デビューはほろ苦いものに終わったが、今宮が感じたのは底知れぬ可能性だ。「次(の登板)がいつになるかは分からないですけど、間違いなく成長して、またここで投げるんじゃないかなと思います」。黄金ルーキーと再び同じグラウンドに立てることを、誰よりも望んでいた。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)