甲斐拓也が挙げた投手陣MVPは? 「腹を括ってやり通した」右腕に感じた“覚悟”

ソフトバンク・甲斐拓也(右)【写真:矢口亨】
ソフトバンク・甲斐拓也(右)【写真:矢口亨】

捕手目線で見た投手陣「もちろん、みんなやってくれたというのもあるんですけど…」

 ホークスは4年ぶりのリーグ優勝に輝きました。鷹フルでは、主力選手だけではなく、若手からベテランまで選手1人1人にもスポットを当てて、今シーズンを振り返っていきます。今回は甲斐拓也捕手が語る投手陣の活躍について。正捕手に今季の「MVP」を強いて挙げてもらうと、ある選手の名前が。「すごく安定して、いい投球をしてくれた」。マスク越しに感じていた、その投手の決意も明かしてくれました。

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 リーグ優勝を支えた投手陣の中でも、ひときわ存在感を放った投手がいた。4年ぶりのリーグ優勝を決めた9月23日、甲斐は今シーズンを振り返った。捕手はチームの勝利で評価されるポジションでもある。投手陣を引っ張り続けた甲斐が語る投手陣の奮闘と、選んだMVPとは――。

「先発に関して言えば、有原(航平)、(リバン)モイネロ、(カーター)スチュワートの3人がしっかりやってくれたっていうのが、すごく大きかったです。ゲームを作った試合も多かったですし、そこが本当に大きかったと思います。中継ぎで言えば、もちろんみんなよくやってくれたというのもあるんですけど。僕はね、杉山(一樹)がすごく頑張ったシーズンだったなっていう風には思います」

 投手陣全体の奮闘を称えながらも、その中で甲斐は杉山の名前を挙げた。今季6年目の右腕は、キャリアハイとなる48試合に登板して4勝0敗、防御率1.66。抜群の成績を残し、ブルペン陣を支えてきた。春季キャンプ中には倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)に“中継ぎ”を志願。「ダメならクビでいいので、やらせてください」。並々ならぬ覚悟で臨んだ1年だった。

 その思いを甲斐もがっちりと受け止めていた。「杉山もいろんな難しい部分もあったと思うんですけど、どこかで腹を括ってやり通したシーズンだったと思うので。そういう意味でも、僕はものすごく安定していい投球をしてくれたと思います」。正捕手は覚悟のこもったボールを投げ続けた右腕をMVPに挙げ、「杉山に助けられた部分っていうのは、僕はたくさんあると思います」と賛辞を贈った。

 甲斐自身も優勝から遠ざかっていた期間は、重圧との戦いでもあった。「色々と大変なところもありましたし、色々(批判を)言われることっていうのも多々ありました。パ・リーグで、優勝できるのは1チームですし、毎年そこを狙ってやっているわけで。その1つになれないということは、もちろん責任もありました。ただ、こうやって優勝できて良かったなと思います」。満足感と安堵に満ちた表情で振り返った。

「1年を通して、ぶれることなく、一喜一憂することなくできたかなとは思います」。リーグ優勝を成し遂げ、自身の心境をこう語った。海野隆司捕手との併用が目立ったシーズンでもあったが、ここまで118試合に出場。力強く投手陣をけん引してきた。昨季は139試合の出場だっただけに、数字だけを見れば出場数は減っているものの、正捕手の座が揺らぐことはなかったといえる。

「どうしても色々やっていれば、怖くなることや不安になることっていうのも多くあると思うんですけど、自分の中でそれはあんまり今年はなかった」。今季は楽しそうにプレーする姿を幾度も見せていた。どんな状況であっても、ブレることなく野球を楽しむ――。その結果が最高の形になった。

 1年間走り抜けられたのは、小久保裕紀監督の存在も大きかった。「1年間、戦いの中でずっとチームのことを考えて、シーズンの中盤から後半にかけて、お話をすることもありました。なので、すごく自分の中でもやりやすい部分はもちろんありました」と、指揮官への感謝を述べた。

「シーズン色々あったなと思います」。間もなくチームは全日程を終え、4年ぶりの日本一に向けた戦いが始まる。最後までブレることなく、甲斐が投手陣を、そしてチームを引っ張り続ける。

(飯田航平 / Kohei Iida)