ソフトバンクは23日、4年ぶりのパ・リーグ優勝を果たした。京セラドームのマウンドに歓喜の輪ができる中、少し遅れて加わったのが柳田だった。5月31日に右ハムストリングを痛めて戦線離脱。チームにとって、そして自身にとっても歓喜の瞬間に駆けつけた。「すごく強いチームだなと思いました」。感慨とともに胴上げを見守っていた。
クライマックスシリーズ、日本シリーズと待ち構える戦いに備え、準備は順調だ。今月20日、ウエスタン・リーグのくふうハヤテ戦(タマスタ筑後)に「2番・DH」で実戦復帰。2打数無安打に終わったが、「自分的にはすごく良くなっているんじゃないかなと感じています」。久々のプレーを思い切り楽しんだ。試合前のセカンドアップ、笹川は柳田から「背番号9、ほしい?」と聞かれたことを明かしていた。柳田目線では、どんな思いがあったのか。
「いやいや、『背番号ほしい!』って(笹川が)言うんで。僕が試合で代わる時、『9番、僕が着けて試合に出ていいですか』って。『お、いいねぇ』って感じでした」
柳田いわく、笹川からも「9番」がほしいという要望があったという。この日の復帰戦では、6回無死に代打を送られて交代した柳田。その際に「9番着けていいですか」というお茶目なやり取りがあったそうだ。試合前と、交代時の2度にわたって交わされた“背番号の話”。将来的に受け継ぎたいと願う後輩は、偉大なスーパースターも「いいねぇ」と認める存在だ。
ホークスの「9番」といえば、小久保裕紀監督が現役時代に背負った番号でもある。通算2041安打、413本塁打を放ち、2012年に現役を引退。2年間は空き番となり、2015年から柳田が継承した。「『背番号をくれ』と言ったのは、俺との会食の約束を忘れた日でした。2時間遅れで来て、『背番号ください』って。まだはっきりとはレギュラーを取っていない時だったので、『今日言うか?』って思ったんですけどね」というのは、有名な語り草。「そしたら、あんなところまで行ってしまいました」。その後の柳田の活躍は言うまでもない。
大先輩との会食での遅刻すら笑い話に変えてしまうのだから、やはり柳田は偉大な存在だ。5月31日の広島戦で右ハムストリングを負傷し、戦線離脱。今季は48試合に出場して打率.293、4本塁打、35打点という成績に終わった。リハビリの日々を送る中で、チームは優勝まで突っ走った。「僕は試合に出ていないので、ファン目線で喜んでいました」と笑顔で話す。「仕事なので。球団の人にちゃんと働けと思われていると思う。そういう責任はあるので、しっかり準備してやりたいなと思います」と続けた。
若手の台頭が目立った2024年。どんな時も飾らないギータは、筑後で汗を流していた時も「こんな暑い中ね、必死にやっている姿を見ると、すごいなっていう。尊敬というか、そういう姿を見るとね。自分も頑張ろうって思うので。カッコいいなと思います」と語っていた。リーグ優勝という節目にも「若い選手がどんどんと出て、強いチームになるっていうのが球団の理想やと思う」と、目線は周囲を向いている。10月には36歳になる。ホークスの将来を思えば思うほど、頼もしい“継承者”を探したくなる。
自主トレをともにする笹川への期待は「もちろんです」と、短い言葉で表現した。長年、課題と言われ続けてきた“世代交代”が、確実に一歩進んだシーズン。「(佐藤)直樹も一緒に自主トレもやっていましたし、彼が支配下になって試合に出ている姿を見ると、すごく嬉しい気持ちがありました。こうやって優勝っていう形になって、若い選手は自信をつける。またこれから来年、再来年、強いチームになるんじゃないかなと思います」。柳田が認めるほどの男に、伝統の背番号9が引き継がれてほしい。