4回2死二塁から山川が先制の左前打…二走・緒方について「理貢のおかげ」
まさに“100点”のプレーで、チームを勝たせてみせた。主砲に「よしよしよし」と思わせる好走塁だ。
ソフトバンクは14日のオリックス戦(京セラドーム)に10-1で勝利した。決勝打を放ったのは、山川穂高内野手。1つずつ減らしてきた優勝マジックは、ついに「8」に。今季から加入した主砲は「まずは僕たちが試合をしている時は、勝つために打つこと。2位の日本ハムの結果を見ながら、そうやって戦っています」と語った。そんな山川が絶賛したのは、緒方理貢外野手だ。
相手先発は、カスティーヨだった。3回を終えて1人の走者も出すことができずに、絶好の立ち上がりを許してしまった。しかし、4回に一気に攻め立てる。先頭の川瀬晃内野手が中前打で出塁。その後、走者が入れ替わる形となり、緒方は二塁へ進塁。2死二塁となり、山川が6球目にチェンジアップを強振すると打球は瞬く間に三遊間を破った。緒方は迷うことなく三塁を蹴り、際どいタイミングではあったが本塁を陥れてみせた。
試合中の広報コメントで、山川は「(緒方)理貢の好走塁のおかげです」と話していた。大事な一戦を勝利で飾った後も「足の速い選手じゃないと(ホームに)戻って来られないというか、タイミング的にもいいところだったので、助かります。ありがたいです」と、若鷹の走塁判断に頭を下げていた。
西武時代にも金子侑司外野手や、中村剛也内野手といった走塁が「上手い」とされている選手たちとチームメートだった。かつての同僚と緒方を比較してみると「理貢はかなり上手いんじゃないですかね。ネコ(金子)さんはもっと足が速いんですけど、そうやって僕も助けられてきましたし」と言う。試合を終えて、山川にとっては今季92打点となった。リーグトップを走っているが、それも生還してくれるランナーがいるからだ。毎試合、チームと個人の成績は必ずチェックしているという。
「ホームランは2位(山川は31本、2位は20本)とも差がありますし、そこは大丈夫だとは思いますけど、打点はチームとしても大事ですので。自分でもチェックしていますよ。それも(シーズン終盤の)楽しみですので。今は日本ハムの結果と、ソト選手(ロッテ)の結果を見ながら『よしよしよし』と思うのが、この終盤の楽しみなんですよね。それで負けることもあるんですけど、楽しんでやっています」
緒方も、4回の場面について「あれは100点の走塁ができました。ベースランニングもですし、踏んでからの膨らみも含めて、いい走塁だったと思います」と胸を張る。自分で「100点」と言い切るのだから、納得のプレーだった。少しでもミスがあれば、アウトになるかもしれないタイミングだっただけに「際どかったので、その中でセーフになるのが自分の役目。仕事ができてよかったです」と、持ち味が光った瞬間だった。
2軍監督時代から緒方を見てきた小久保裕紀監督は、少し厳しい評価だった。4回無死一塁では犠打を成功させられず、5回1死満塁のチャンスでは遊飛に終わった。「真価が問われるところなんで。(5回1死)満塁でショートフライ。次の打席の(6回1死)満塁ってそんなにプレッシャーはないので。打ったのはえらいですけどね」。優勝まで一歩ずつ近づきながらも、隙を見せないことをいつもチームに言い聞かせている指揮官。だからこそ、ミスの方が印象に残ってしまった。1軍で戦う初めてのシーズン。悔しさも喜びも、全てが貴重な経験となっていく。
プロ初打点を記録した緒方は「自分がチャンスを潰しているのはわかっていました。人生において、そんなにチャンスはないと言い聞かせて、集中して打席に立つことができました」と、引き締まった表情で語った。これまでは主に代走としてチームを支えてきたが、スタメンでの存在感も際立つ。与えられたチャンスは、絶対に逃さない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)