「普段通りにやれないのが9月」 今宮健太が激白…重圧を背負う正木智也を「救いたい」

ソフトバンク・今宮健太【写真:栗木一考】
ソフトバンク・今宮健太【写真:栗木一考】

正木智也が5回2死満塁で凡退…今宮も9回に代打で登場も遊ゴロに倒れた

 ソフトバンクは7日の西武戦(みずほPayPayドーム)に2-3で敗れた。今宮健太内野手は、1点を追う9回のチャンスで代打として登場した。経験豊富なチームリーダーが「めちゃくちゃ緊張しました」と口にした理由は、若鷹のため。得点圏で凡退してしまった正木智也外野手を「救いたい」気持ちがあったからだった。

 先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手が7回1失点の好投を見せた。小久保裕紀監督が「カーターは言うことなかった」と絶賛するほど、連敗中のチームを鼓舞するような投球だった。しかし、1点リードの8回に登板した杉山一樹投手が同点打を浴びると、9回にはダーウィンゾン・ヘルナンデス投手が勝ち越し弾を許した。追いかける展開となって迎えた最終回。2死一、二塁と意地を見せたものの、最後は今宮が遊ゴロに倒れてゲームセット。4試合ぶりの白星は遠かった。

 常々、チームの勝敗はレギュラーが背負うものだと発言してきた今宮。率直に、現状をどのように感じているのか。そう問われたチームリーダーは、真っすぐな受け止めを口にした。

「なかなか勝てない状況ですし、(シーズンの)前半、中盤に比べて点を取っていけない。みんな(必要以上に)意識していることはないと思うんですけど、これも自分たちで打破していかないといけないと思っています」

 通算1594試合に出場。攻守で欠かせない存在として、何度も優勝に貢献してきた。「経験と言っても、僕はこういう立ち位置になって優勝したことがない。どちらかというと松田(宣浩)さん、内川(聖一)さんだったり、先輩がいる中で目の前のゲームに必死こいてやってきた中で、優勝を経験させてもらってきた」。2020年のリーグ優勝時は29歳。その前の2017年は27歳だった。チームの中心に成長して迎えた初めての局面に「こういう時にどうすればいいのかなって思います」と本音も明かす。

 今宮が挙げた偉大な先輩たち。記憶に残っているのは、チームのために積極的に動く姿だった。大きな声を出した松田さんに、結果で引っ張った内川さん。今の自分を重ねながら、「(先輩たちは)“自らが(引っ張る)”っていうところはありましたし、僕自身も役割の中でやることを常に意識してやっていこうとは思っています」と受け止めている。そして重圧も含めて「難しいです」と、付け加えるように話した。

「ここの踏ん張りどころは、チームとしてもう1つ、強くなれるところだと思います。こういう経験なくして優勝しても、その先にはもっといろんなことがある。迷うことがあったり、『なんでなんだ』って思うこともあるかもしれない。この9月上旬でこういう戦いになっている中で、チームとしても個人としても、乗り越えていくことで成長というか。違う形が見つかってくるとも思っています」

 この日、遊撃のスタメンは川瀬晃内野手に譲る形となった。8回2死二塁の守備、西川が放った打球は二遊間へ。川瀬は横っ飛びしたものの、わずかにグラブは届かなかった。今宮は代打の準備中で、同点に追いつかれたシーンは見ていなかったそうだが「もちろん、全力でやっていますから」と、後輩たちの姿を見守っている。「結果が出ないことに重圧を感じているのか分からないですけど。普段通りにやれないのが9月なんだなって。それは思います」。もがく若手たちの今が、これからの成長に繋がることを強く願っていた。

 今宮自身の責任も痛感している。今季は主に2番打者として、強力クリーンアップに「繋ぐこと」を掲げて、打撃面でも奮闘してきた。チームが苦境に立たされている今を「クリ(栗原陵矢内野手)から(攻撃が)始まることが多いので。今日みたいに晃(川瀬)が塁に出て、3番や4番、5番で勝負できて点が入ってくるとチームとしてもガラッと変わると思う。今日は晃がやってくれましたけど、ああいう形で僕も進めていけたら」と言い聞かせた。

 5回2死二、三塁の場面では近藤健介外野手が申告敬遠で歩かされた。西武ベンチは満塁で正木智也外野手との対戦を選択し、結果は空振り三振。24歳の若鷹は、6番というポジションで壁にぶち当たっている。9回に代打で凡退した今宮も、「めちゃくちゃ緊張しました」という。自分が打てなければゲームセットという状況。「今日は正木が苦しんでいましたけど、救えるような選手になっていきたいです。ああいうところで救ってくれたのが僕自身にとっては先輩たちだったので」。正木の気持ちも背負って、最後のチャンスに立っていた。

 繰り返すように「打破していかないといけない」と、今宮は言った。試されているチームの真価。優勝して心から笑うためにも、この試練を乗り越えていきたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)