松本裕樹の“謝罪”、大山凌の涙 先発として眺めた逆転負け…大関友久の胸中は?

ベンチ前で投手を出迎えるソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】
ベンチ前で投手を出迎えるソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】

4日の日本ハム戦で9回に6失点…リリーフ陣の姿を見て大関友久が抱いた胸中

 逆転されていくチームを見て、どんな思いを抱いたのか。ソフトバンクは4日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に5-8で敗れた。3点リードの9回に相手打線の勢いに飲み込まれ、一挙6失点。それまで勝利投手の権利を手にしていたのが大関友久投手だった。2人のルーキーにかけた言葉、松本裕樹投手からの“謝罪”――。ベンチ裏でのやり取りを激白した。さらには今も大切に胸に閉まっている小久保裕紀監督からの言葉も明かした。

 注目の立ち上がり。初回は2死を奪ったものの、清宮に四球を与えると、レイエスには浮いた球を左翼席に運ばれた。いきなり2点を先制されたが、その後は修正して、6回を2安打2失点。「(球を)操るというよりは、工夫もしながらでした。上手いこと抑えることができたかなと思います」。先発としての役割は十分に果たしてマウンドを降りた。

 しかし、9回に全てが急転した。抑えの松本裕が右肩の張りのため、先頭に四球を与えたところで緊急降板。その後に登板した大山凌投手、岩井俊介投手も流れを止められず、6点を失って逆転された。大関は投手交代のたびにベンチの前まで出て、1人1人の投手を出迎えていた。どんな心境でチームを応援していたのか。

「(投手を出迎えることは)みんなやっていることじゃないですか? 個人競技じゃないですから。何も悔しくないわけではないですけど、チームの一員としてやるべきことはありますから。そういう姿が大事だと思って自分はやっていますし、当たり前のことかなと」

 松本裕も岩井も、リリーフ投手はチームの勝利はもちろん、先発投手の気持ちを背負ってマウンドに立っている。大山の涙を見た大関も「両方(チームの勝利と自分の勝ち星)を思ってくれていたんだなって。ルーキーですし、とにかくチームの勝敗に集中してくれていたと思います」と、熱い気持ちは受け取っていた。「勝ったら嬉しいですし、負けたら悔しいです。それはマウンドにいても、いなくても同じ。当たり前ですけど、チームの勝利にこだわることはすごく大事なこと」と言う姿が大関らしかった。

 試合後はルーキー2人にも、自ら「また次頑張ろう」と声をかけた。大関が支配下登録されたのは入団2年目の2021年5月。大山、岩井俊介ともに1年目から1軍戦の9回を任されたことが、何よりも財産になるはずだ。「上手くいかない時は絶対にある。僕もそうですけど、自分の成長に繋げられるように」。緊張感の中で、リリーフ陣は日本ハム打線に立ち向かっていった。「僕も支配下になって1年目の時は、9回なんて投げたことがなかった。そう考えると、重圧もかかっていたと思いますし。乗り越えてほしいというか、応援したいです」と、エールを続けた。

 松本裕からも「申し訳ない」と謝罪をされたという。5日に登録抹消となった右腕は、今季50試合に登板して2勝2敗14セーブ、23ホールド、防御率2.89。セットアッパーに守護神と、大車輪の活躍でブルペンを支えてきた。大関は「マツさんもいろんな思いがあってマウンドに立っていたと思いますし、(チームを)勝ちに導いてくれていたので。自分も『(右肩を)治してください』って気持ちで(試合後に)話をしました」とやり取りを明かした。頑張りを見てきたからこそ、松本裕のいち早い復帰を左腕も待っている。

ベンチに戻る岩井俊介を出迎える松本裕樹【写真:荒川祐史】
ベンチに戻る岩井俊介を出迎える松本裕樹【写真:荒川祐史】

 大関の前回登板となった8月28日のオリックス戦(長崎)。6回まで無失点に抑えたものの、7回2死満塁でマウンドを降りた。バトンを受けた津森宥紀投手が四球、四球、死球と3者連続で押し出しと乱調。大関には自責点3が記録され、結果的に3敗目を喫した。今月4日の日本ハム戦も踏まえて、改めて自分自身の白星について問われると、らしい答えが返ってきた。

「個人の目標ももちろんありますし、そこに向けてやっている部分もありますけど。自分自身の調子もいいですし、そこに引きずられてペースを乱すことはしたくないです。周りの皆さんが『勝ちがついてほしい』と言ってくれたり、勝ちがつかなかったことに対して悔しがってくれたりとか、そういうことはすごくありがたいです。感謝しながら、自分のピッチングを続けていきたいというのが一番です」

 そう思うのも、大関なりの理由がある。今季の開幕戦となった3月29日のオリックス戦(京セラドーム)。試合前に小久保監督は全員をブルペンに集めて、思いを伝えた。当時について「監督がミーティングで仰っていたんです。『チームの目標と、個人の目標。この世界はどちらも同じレベルで見ないといけない』と。一言一句が同じじゃないかもしれませんけど」と明かす。シーズン10勝と、チームの日本一。本気で目指しているからこそ、指揮官の言葉がスッと自分の胸にも入ってきた。

「タイミング的に、今は自分の勝ち星どうこうという時じゃない。僕もリーグ優勝、日本一になりたいと本当に思っています。日本シリーズまで見据えてどういうチームになるか、自分がどんなピッチングをするべきか。そこをものすごく大切に考えています。その中でも、自分の目標を最後まで貫く気持ちも変わらないです」

 1つ1つの言葉が、偽りのない本音だった。目標も覚悟も強く決まっているから、大関友久は揺らがない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)