1年以上のリハビリで「光も見えない」 和田毅に誘われたBBQ…武田翔太が明かす今

ソフトバンク・武田翔太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・武田翔太【写真:竹村岳】

4月に受けたトミー・ジョン手術…和田もメジャー時代の2012年に経験

 若鷹と距離を詰める先輩を見て、やっぱり偉大だと思った。8月上旬、和田毅投手が選手やコーチに呼びかけてファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」でバーベキューを開催した。リハビリ組や寮生の選手たちのために「なかなかキッカケなんて(自分で作るのも)難しいでしょう」と思いを明かす。そんな和田から、名前が挙がったのが武田翔太投手だった。

 武田は昨シーズンに29試合に登板して1勝2敗、防御率3.91。中継ぎとして、新しい可能性を示したシーズンだった。年が明けた2024年は、オープン戦で1試合に登板したのみ。3月5日のヤクルト戦(みずほPayPayドーム)で、5回からマウンドへ。先頭の西川に対し、初球で死球を与えてしまった。「あれがもう狙ったところに行かなかった」と、すぐさまリハビリ組への移管を決意。4月に「右肘内側側副靭帯再建術および鏡視下肘関節形成術」、いわゆるトミー・ジョン手術を受けたことが球団から発表された。

 怪我から復帰を目指すのは、地道な日々。バーベキューを主催した和田も「リハビリってどうしても単純作業。ちょっとでも気分転換になったら」と理由を語り「同じ作業をずっと続けているし、武田なんてトミー・ジョン(手術)でね、なかなか光が見えないというのもあるでしょう」と名前を挙げていた。参加した理由に武田は「和田さんから誘われたんです」と明かす。10代、20代の若手選手に囲まれた中で、どんな時間を過ごしたのか。

「楽しかったです。意外と3軍4軍の、遠征に行っていなかった子たちもいた。なかなかしゃベるタイミングとかないんですけど、そういう子とも話ができて、めっちゃ有意義でした。和田さんもずっと若い子が周りにいる中で話はしていましたし、僕はそれを横で聞いていた感じ」

 和田は2012年から海外FA権を行使して、メジャーリーグに挑戦した。同年にトミー・ジョン手術を受けただけに、2人には大きな共通点がある。武田が手術を決断する前から、肘について相談していたそうで「和田さんがやった年代と、また手術のやり方も変わってきている。違いはある中でも聞かせていただいていました」と舞台裏を語った。

 手術を受けてから4か月以上が経った。最初は「“あぁ”って苛立つこともあったけど、できることは決まっていますから。それも受け入れながらという感じです」と振り返る。移植した腱は、右肘に少しずつ馴染んできた。今は10メートルほどのネットスローで「まだまだ投球ってレベルではないですけどね。確認しているようなところです」という現状にある。

 育成の佐々木明都投手やルイス・ロドリゲス投手ら、同じくトミー・ジョン手術を経験した選手がリハビリ組にいる。「佐々木なんかは、朝べったりくっついて一緒にトレーニングしています。だいぶ体も変わってきました」と、一緒に復帰を目指している。思う存分に投球できないだけに、こなせるメニューは限られる。「トレーニングにしか重きは置いていない」というのは武田なりの表現だが、できることに全力で向き合っているところだ。

筑後で主催されたBBQの様子【写真提供:瀧本将生】
筑後で主催されたBBQの様子【写真提供:瀧本将生】

 単調な日々の中でも、和田の存在が支えになっている。自分の登板日以外は、リハビリ組に入ってメニューを消化している左腕。若鷹の中に偉大な先輩がいることで「質問はいろいろできるし、悩むことはこれからも出てくると思う。疑問に思ったら自分からガンガン聞いていこうかなと」。武田も決して、自分から輪の中心に飛び込んでいくようなタイプではない。自ら質問するのも「和田さんにしか聞かない」と、心からリスペクトしているからだ。

 プロ入りした2012年は、和田が米国に行った年で“すれ違い”だった。武田が14勝を挙げた2016年、ホークスに復帰した和田が15勝。最多勝のタイトルを惜しくも逃し「そんなこともあったね」と懐かしそうに笑う。「和田さんは“超人”やからね。体の凄さももちろん、意識の高さがやばいです。刺激を僕らからかけないといけないんですけどね、本当にもらってばかり」。練習に対する姿勢や、徹底した食事の管理など「すごいですよ、めっちゃすごいです」という大きな背中。追いつき、追い越していきたい。

 4月に手術を受けた時点で、復帰まで1年以上がかかることはわかっていた。今でも応援してくれているファンに「時間はかかりますから。毎日一歩一歩。来年しっかり復帰できるように頑張ります」とメッセージを送った。武田の表情が確実に明るくなっているのは、和田をはじめ、支えてくれる人がたくさんいるからだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)