外出&遊びの「欲もない」、SNSは開設半日で“閉鎖” ドラ1前田悠伍がストイックな理由

ソフトバンク・前田悠伍【写真:竹村岳】
ソフトバンク・前田悠伍【写真:竹村岳】

「ミステリー系の本を読んだり、Netflixで青春系の作品を見るのが好き」

 高卒1年目らしからぬ堂々たる投球を見せている。ドラフト1位ルーキーの前田悠伍投手はウエスタン・リーグで8試合に登板して2勝1敗1セーブ、防御率1.69と、2軍で好成績を残している。ポテンシャルの高さを日々感じさせるが、それ以上に目を引くのは、野球に取り組む姿勢だ。

 日々の取り組みを前田悠はこう語る。「今の課題を潰すっていうことをまずは一番に考えていて、その課題を消さないことには上に上がれない。課題が残っているままだと自分の気持ち的にも嫌ですし、その課題をゼロにして挑みたいっていう気持ちでやっています」。練習や試合で課題が浮き彫りになれば、すぐにそれを克服するため行動に移している。

 食生活への意識も高い。高校時代もきっちり三食食べることは意識していたが、プロ入り後は寮でよりバランスのいい食事が摂れており「それは本当にパフォーマンスにも繋がってます」と改めて感じている。夏場になって体重が落ち気味になっており、体重を維持する食事の摂り方を模索しているところで「先輩に聞くのも1つだと思いますし、自分で本とか読んで知識を得たりして、それを実践してよかったらやっていこうかなとも思います。いろんなところから知識を得て、やってみたいっていう気持ちはあります」と、学ぶことにも意欲的だ。

 ストイックさは“オン”の時だけではない。オフの日に“出かけない”ことでも知られるようになってきた。休日は基本的に寮で完結する。「寮にいる時は休みも外に出ないですし、必要な買い物とか以外は出ていないです」。日用品の買い物に出るのも渋るほどで「基本はAmazon」で済ませているという。遠征先でも他の選手が外食に出かけたりする中で「僕はもうずっとホテルでストレッチとかしたりしているので」と話す。

「出たくないというか、あまり外に出るのが好きではないんです。その時間がトレーニング施設に行くとかだったら出るんですけど、別に自分にとって必要ないなと思ったら出ないというか……。高校の時は本当にずっと寮かグラウンドか学校かの生活だったんで、もうそれに慣れている。その環境でずっと過ごしていたので、それが自分の中では普通になっています。高校3年間(外に)出られなかったから、出たいなっていう欲もないです。ずっとその環境でやってきたので、それが一番合ってるというか、全然苦じゃないので」。19歳は淡々と、堂々と語る。

 大阪桐蔭高時代はオフがあっても月1回程度。「寮は山の上にあるんで、どこかに行くこともできないんで」と苦笑いで振り返る。考え方も行動もストイックだが、本人は決して自分を律しようと我慢しているのではなく、好んでその選択をしている。「1人の時間が一番いいので。やっぱりなにも気を遣わずにできるので、それが自分にとって一番いいですね」と笑う。

「オフはたくさん寝る」という前田悠の睡眠以外の時間は「試合があまりない日とかはお風呂に結構長く入ったりしています。基本はずっと部屋にいるんですけど、最近は本を読み始めたので本を読んだりとか、動画を見たりとかしています」という。具体的な好みの作品について「最近はミステリー系の本を読んだり、Netflixで青春系の作品を見るのが好きなんですよ。『余命1年の僕が、余命半年の君と出会った話。』とか『今日好き(今日、好きになりました)』とかも見たりしてます。余命のやつを見た時にはちょっと泣きました」と、知られざる素顔も覗かせた。

 そんな前田悠が「めちゃくちゃ苦だった」というのが、高校時代の“スマホ禁止”だったという。「入寮して最初はめっちゃ欲しかったんです。1か月くらいしたら、それが当たり前になって大丈夫になりました」。すぐに慣れたというが、最初は苦痛だった。高3の夏、高校野球を引退した翌日に退寮すると、実家に保管してあったスマホを親が持ってきてくれた。「あった方がいろいろ調べるのにも便利ですね」。SNSやゲームをするためではなく“調べ物”をするためのツールとしての認識が強いのも前田悠らしい。

 プロ入り後に作成したインスタグラムのアカウントを、数時間後で削除した。その真相を「なんか勢いというか『作ろうかな』っていう気になって。でも、よくよく冷静に考えたら別にいらないなって思って消しました。別になにも投稿しないし、見るだけだったら別にいいかな、必要ないなと思って」と明かす。今後も作る予定はないという。揺るがない“マイペース”ぶりも全ては野球のため。これからどんなプロ野球生活を送っていくのか楽しみだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)