18日のロッテ戦で牧原大が2匹の愛犬とお立ち台へ…西田広報が明かす舞台裏
珍しい光景は、自分なりに考えた“サプライズ”だった。ソフトバンクが2-1で勝利した18日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。先発してプロ初勝利を挙げた松本晴投手、そして決勝の1号ソロを放った牧原大成内野手の2人がヒーローインタビューに選ばれた。この日は愛犬と野球観戦が楽しめる「いざゆけワンワンデー」。牧原大が愛犬を抱えてお立ち台に上がった舞台裏を、西田哲朗広報が明かした。
今季初先発となった松本晴。ウエスタン・リーグでは5試合に登板して24回2/3イニングを投げて防御率1.09と、結果を残して掴んだ1軍切符だった。5回を投げて2安打無失点と試合を作ると、試合が動いたのは5回の攻撃だった。1死から牧原大が打席に入ると、種市の初球を右翼テラス席に運んだ。前日の17日には同点の8回に痛恨の失策があり、その後の3失点に繋がってしまった。まさに汚名返上となる一撃だった。
牧原大はお立ち台で「入るかな、とは思ったんですけど。テラスだったので、もうちょっとトレーニングして頑張りたいなと思います」と口にした。自らの失策についても「昨日は僕のエラーで負けてしまったので、今日なんとか取り返すことができてよかったと思います」と、燃える思いを抱いていたことを明かした。その後のフォトセッションで牧原大に近づいてきたのが、2匹の愛犬を抱えた西田広報だった。その舞台裏を明かす。
「たまたま、(球団スタッフの)柿木(映二さん)がいたんです。そしたら『(牧原大の)家族が来ている』って言ったんですよ。牧原(大)のヒーローは僕の中で決まっていたんですけど。柿木が冗談で『ワンちゃんもいますよ』って言ってきたので、それですぐに動こうと思いました。『犬や!』って思いましたね、こんなシーンなかなか撮れないですから」
牧原大の妻もドームを訪れており、愛犬の「おこげ」と「あずき」もいた。球場内の一室で観戦する家族を、2014年育成ドラフト5位で入団し、今は球団スタッフとして働いている柿木映二さんが目撃した。西田広報はすぐに閃いた。「全部の部署に確認しました。すぐに連絡をして、連携も取って『すぐにやろう!』って言いながら。(牧原大の)奥さんにも確認させていただきました」と、西田広報も含めた迅速な動きがあのシーンを生み出した。
「はじめは1匹にしようと思っていたんです。牧原(大)に、ちょっとサプライズ感も出したかったので、ヒーローインタビューの話が終わったら(愛犬を)連れて行こうかなと思っていたんですけど、簡単には連れて行けなかったです。グラウンドで、選手がプレーするところですからね」
総合的な判断をして、フォトセッションの時に愛犬を登場させようと決めた。松本晴がプロ初勝利だっただけに、試合終了直後の小久保裕紀監督とのツーショットは必ずカメラマンが撮影する。そうなると「監督との写真があると、あの(愛犬との)写真が使われなくなってしまうかなって思いました」と言う。「だから初勝利と『ワンワンデー』を合わせようって思いました。『ワンワンデー』の方も、少しでも(メディアに)取り扱ってもらえたらいいなって」と、愛犬を抱き寄せる牧原大と松本晴のツーショットを演出。西田広報の機転が光った。
驚いたのは牧原大の愛犬2匹が、西田広報の手の中で大人しく抱き抱えられていたこと。西田広報自身も「エマ」と名付けたチワワを飼っているだけに「赤ちゃんと一緒ですね。抱き方は慣れていました。犬的によくない姿勢もあるんですけど、預かるからにはそこの自信はありましたね」と、しっかりと手懐けていた。
ヒーローインタビューに愛犬と一緒に上がるという珍しい光景。反響は大きかったそうだ。「会社的にも喜んでもらえたみたいです」。球団がPRしたいイベントにうってつけの選手がヒーローインタビューに選ばれるほどの活躍を見せてくれたからこそ、西田広報も全力でその瞬間を彩った。愛犬との記念すべき写真を撮れたことで、「牧原(大)も喜んでくれました。こんなの一生にあるかないか、ですから。前日にエラーもして、悔しい思いもあったでしょうから」。かけがえのない思い出を作ることに貢献できた――。西田広報も笑顔で喜んでいた。
「あれは簡単にできることじゃないですよ。僕が運んできただけみたいに見えるかもしれないですけど(笑)。いろんな人が絡んでいるので」。広報としてのセンサーが敏感に反応した。愛犬が“家族”であることを心から理解しているから、西田広報にとっても微笑ましいヒーローインタビューとなった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)