川村友斗のバースデー活躍は偶然じゃない 正木智也とようやく言い合えた「ナイバッチ」

ソフトバンク・川村友斗【写真:小池義弘】
ソフトバンク・川村友斗【写真:小池義弘】

7月9日以来のスタメンとなった川村が2安打2打点「思い切っていこうと」

 年に1度の特別な日にみせた活躍は必然だったのかもしれない。13日の西武戦(ベルーナドーム)。この日25歳の誕生日を迎えた川村友斗外野手の名前は、35日ぶりにスタメン表に記された。今季開幕直前に支配下選手登録を勝ち取った川村にとって、バースデーに1軍の試合に出場するのはもちろん初めてだった。

 前日12日に村松有人打撃コーチから「明日もしかしたら(先発)あるぞ」と告げられたといい、「ちょっと誕生日なんですよね」とさり気に“アピール”したという。「そういう日にスタメンってなかなかないと思うので、思い切っていこうと思っていました」。

 その言葉通り、1点を勝ち越した直後の6回2死一、三塁では2点適時三塁打をマーク。貴重な追加点を挙げるなど、2安打2打点の暴れっぷりで首脳陣の起用に応えた。1カ月ぶりのスタメンでの見事な活躍ぶりは偶然だったのか。最近の川村の姿を見ていた同学年の正木智也外野手が証言した。

「なかなか出番がなくても別に落ち込むことなく、変わらずに自分のやるべきことをやっていたので。いつも(途中出場で)1打席とかで終わっていたんで、そこはやっぱりすごく難しいのかなと思いますけど、こうやってスタメンで出てヒットを2本打つっていうのはすごいなって。いつも僕が打ったらナイバッチと言ってくれるので。きょうは僕がナイバッチって声を掛けました」

ソフトバンク・川村友斗(左)と正木智也【写真:竹村岳】
ソフトバンク・川村友斗(左)と正木智也【写真:竹村岳】

 川村の先発出場は7月9日のオリックス戦(京セラドーム)以来で、フル出場になると5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)までさかのぼる。選手層の厚さゆえにチャンスは多くないが、正木は川村の普段の姿勢から感じるものがあるという。

「(川村は)守備から入ることも多いので、守備練習を本当にまじめにやっている。そこは僕も見習って。自分が打てなくても変わらずやろうというのは心がけています」。この日は自身が右翼、川村が中堅に入った。「きょう隣にいて、やっぱり近くで守るのは楽しいし、いずれは2人でレギュラー取りたいなと思いました」と川村の活躍を自らのことのように喜んだ。

 試合後の川村は反省も忘れなかった。「あのショートゴロが。やっぱり代走とかで出ることも多いので。あれだけはやっちゃダメかなと思います。マジであのショートゴロは反省です」。振り返ったのは5回の場面。先頭で右前打を放ち、犠打で二塁に進んだが、今宮の遊ゴロで三塁を狙い、タッチアウトになったシーンだ。自らの役割と立場を十分に分かっているからこそ、反省の言葉が口をついた。

 25歳になったばかりの川村は「一番いい年にしたいです。もっともっとファンの方に名前と顔を覚えてもらえるような1年になればいいですね」と力を込めた。冷静に自己分析しつつ、日頃から高い向上心を持って努力を惜しまない姿があるからこその、必然の活躍だった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)