山川穂高が語るアーチストの「第6感」…“今年初見”のカーブを1振りで仕留められた理由

ソフトバンク・山川穂高【写真:竹村岳】
ソフトバンク・山川穂高【写真:竹村岳】

山川が3試合連続本塁打となる22号2ラン…好投の楽天瀧中から価値ある一発

 これぞ「アーチスト」と呼ぶにふさわしい打球だった。11日の楽天戦(みずほPayPayドーム)。0-0で迎えた4回無死一塁で山川穂高内野手が甘く入ってきたカーブを豪快に振り抜いた。ここまで好投を続けていた楽天先発の瀧中から放った価値ある先制の22号2ランは左中間スタンドに突き刺さった。

「なかなか(瀧中は)打てそうで打てないピッチャーなんですけどね。コーナーを丁寧に突かれながらでしたけど、カーブの失投を1球で仕留めたところはさすがですね」。小久保裕紀監督も笑みを浮かべた主砲の一発は、山川自身にとって3試合連続のアーチとなった。

 瀧中とは今季初対戦で、空振り三振に終わった1打席目はカーブが1球も来なかった。2打席目の2ランは、いわば「今年初見」だったボールを完ぺきにとらえたことになる。試合後、山川はアーチストだからこそ持ちえる「第6感」と「感性」について明かしてくれた。

「瀧中投手のカーブっていうのは非常に抜けるというか、遅いカーブなので。それは頭から外さなかったです。そういう意味ではうまく対応できたのかなと思います」。相手からすれば初球から裏をかこうと選んだボール。それを一振りで仕留めたことで、大きなダメージを与えることに成功した形だ。

 瀧中との対戦成績は通算で22打数10安打の打率.455、2本塁打と圧倒している。「相性はあると思いますけど、相性がいいからといって『きょうは打てる』と思っているかといったら、そうでもないので」。それならば“悪い相性”は気にしないのか。そこは山川ならでは答えが返ってきた。

3試合連続本塁打となる22号2ランを放ったソフトバンク・山川穂高【写真:竹村岳】
3試合連続本塁打となる22号2ランを放ったソフトバンク・山川穂高【写真:竹村岳】

「うーん……。悪い方は気にするというか、対策はしますよね。やっぱり悪いままだと一生打てない。やっぱりプロのピッチャーなので。対策を練って何を狙っていくのか、どこで始動するのかとか。そういう対策はとりますね」。豪快な打撃の背景にある繊細さこそが、これまで240本ものアーチを積み重ねられてきた理由だ。

 3試合連続本塁打を放っていることもあり、自身の状態は「いいと思います」ときっぱり言い切った。好調な時期に本塁打を積み重ねたいところだが、「そううまくいかないことは分かっている」と言う。

「やっぱり、大体は3試合連続で終わるじゃないですか。4試合目っていうのは、なかなか打たせてくれないんですよね。(自身の最長は)4試合連続ですけど、それより1カードで1本というのは年間を通して思っていることなので。明日も打てるに越したことはないんですけど、謙虚に、足元を見つめ直してしっかりやっていくだけかなと」

 この日のお立ち台では、今後の目標に「30(本塁打)はいきたいですね」と、やや控えめに宣言した。「本数は1本ずつしか増やしていけないので。やっぱり先を見てもしょうがないし、現実的に今から40本打つとなったら、とんでもないペースになるので。どうしても6月とかに打てなかった分は、そんな急激には取り戻せない」。

 豪快なスイングとド派手なパフォーマンスが代名詞ではあるものの、アーチスト山川を形作っているのは繊細さや冷静な自己分析だ。“アーチストの流儀”は、どこまでも興味深いものだった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)