今季9年目の川瀬は開幕から1軍でプレー…厚い首脳陣の信頼
チームを救ったファインプレーの裏に、名手の一言があった。「前の打席で一、二塁間を抜かれていたので。そのイメージを強く持っていたところに『こっちもあるよ』とアドバイスしてくれたので……」。そう振り返ったのは川瀬晃内野手だ。
2日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。3点リードで迎えた6回2死一、二塁で上川畑の打球は二遊間を襲った。二塁に入った川瀬がダイビングキャッチでボールをつかむと、倒れた体勢のまま遊撃の今宮健太内野手に素早く送球。失点を防いだ好守に、小久保裕紀監督も「なんと言っても晃(川瀬)のプレー。しっかりと守備で盛り立てたなと思います」と賛辞を惜しまなかった。
試合後、川瀬がお立ち台に呼ばれたことが、このワンプレーの大きさを物語っていた。その場でヒーローが口にしたのは意外な言葉だった。「今宮さんに一言いただいたおかげなので」。直前にあったやりとりに深く迫った。
「打球が来る前に『センターラインもあるよ』って言われて。意識していましたし、本当に飛んだ来たので感謝しています」。上川畑の前打席は一、二塁間を破る右前打。そのイメージを強く持っていた川瀬にとっては、まるで「予知能力」にも思えた今宮の一言だった。
4日の日本ハム戦では遊撃手としてパ・リーグ最多となる1532試合出場を果たした今宮。そんな名手とのやりとりは、川瀬にとって大きな意味があるという。「数は多くないですけど、毎回声はかけてもらっているので。それが今日は当たったので、改めて声かけは大事だなと思いました」。
川瀬のファインプレーを導いた今宮はどこまでもクールだった。「(自身の声掛けは)全然関係ないですよ。あれは晃の実力ですよ。あいつの実力です」。真意をあえて口にすることなく、同郷・大分出身の後輩を持ち上げた。
プロ9年目を迎えた川瀬は今季開幕1軍入りを果たし、ここまで登録を抹消されることなくプレーを続けている。スタメン出場は多くないものの、首脳陣から信頼されている何よりもの証だ。
川瀬のプレーを誰よりも喜んだのは、本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチ。「晃はずっと毎日いい準備をしてくれているので。それが一番ですよ。本当にいい仕事をしてくれました」。スーパーサブとしての役割を全うする26歳のプレーに、満面の笑みを浮かべた。
「スタメンだろうが途中出場だろうが関係ないので。しっかりといい準備をして試合に出るっていうのは、毎日一緒なので。準備を怠らずにやっていきたい」。チームを縁の下で支える川瀬は、ホークスにとって欠かせない存在となりつつある。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)