牧原大と川瀬の正二塁手争い…清々しき「ノーサイド精神」
普段は明るい表情でチームメートを迎える立場だからこそ、笑顔で迎えられた時の喜びもひとしおだった。2日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。チームを救う好守備を披露し、ベンチに戻ってきた川瀬晃内野手。満面の笑みを浮かべてハイタッチを交わしたのが牧原大成内野手だった。
3点リードで迎えた6回2死一、二塁。上川畑の二遊間を襲った鋭い打球に、二塁に入った川瀬がここしかないというタイミングでダイビングキャッチ。素早く一塁にボールを送り、アウトを奪った。もし中前へ抜ければ1点を失い、相手に流れがいきかねない場面だっただけに、ホークスにとってビッグプレーとなった。
川瀬を出迎えた牧原大はこの日ベンチスタート。5歳差の2人は現在、二塁のポジションを争うライバルといえる関係だ。開幕からここまで70試合に出場し、うち58試合が途中出場という「スーパーサブ」の川瀬は、先輩の振る舞いに何を感じたのか。
「僕はベンチにいることが多いですし、明るく選手を出迎えるのが役目だと思っているので。自分が試合に出ていいプレーをしたときに、牧原さんのように笑顔で出迎えてもらえたら頑張れるというか、自分の気持ちも上がりますね」
牧原大からかけられた言葉は「ナイスプレー!」の一言。それに川瀬は元気よく「ありがとうございます」と応えた。「もちろんライバルっていうのはありますけど、試合に入ったらチーム全員で戦っていかないといけないので。そういった言葉をもらえるのは本当にうれしいです」と笑顔を見せた。
ここ2試合は先発を外れている牧原大にも笑顔で川瀬を出迎えた“本心”を聞いてみた。「そんなん当たり前じゃないですか。チームメートっすよ」。言い淀むことなく、さらりと言葉を口にした。
自身は7月30日から8月1日の楽天3連戦でいずれも先発しながら、3試合連続失策を記録した。守備には並々ならぬこだわりを見せる男だけに「悔しいっすよ、それはもちろん。当たり前じゃないですか」ときっぱり言い切った。
5歳下の後輩に2試合続けてスタメンの座を奪われたことへの強い悔しさを隠そうともしない一方で、試合ではベンチから大声で味方を鼓舞するのもまた、牧原大本来の姿でもある。「試合は毎日あるんで。誰をどう使うかっていうのは監督が決めること。与えられたところでしっかりやるしかないです」と割り切りを強調した。
「ぶすくれとってもしゃーないんで。練習して取り返すしかないです」。その言葉通り、3日の同戦の試合前練習では、終了間際まで二塁のポジションに入り、捕球動作を繰り返していたプロ14年目の31歳。その姿は何よりチームの雰囲気を引き締めさせる。
今季9年目を迎えた川瀬は「いろんな先輩に助けられてきた身なので。僕も試合に出る以上は誰かを助けるプレーや、試合を決める一打を打ちたいなとずっと思っています」と拳を握った。ハイレベルなライバル関係こそ、チーム力の底上げに何より重要だと痛感したシーンだった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)