リハビリで迎える残り半月…「今年が瀬戸際」 佐藤宏樹を支えた柳町達の“言葉と姿”

ソフトバンク・佐藤宏樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・佐藤宏樹【写真:竹村岳】

悔しさを滲ませながら語った「野球を続けたいっていう思い」

 もどかしさを抱えながら懸命に汗を流している。ソフトバンクの育成4年目左腕、佐藤宏樹投手は、右脇腹を痛めリハビリ組での日々を過ごしている。「1日1日が早いです」。悔しさを噛み締めつつ、語ったのは支配下選手登録の期限(7月31日)が迫ってる中でリハビリ組にいる現実があるからだ。

 佐藤宏は、2020年の育成ドラフト1位で慶大から入団。今季で4年目を迎える左腕だ。2軍では先発で登板した1試合を含む、3試合に登板して防御率1.74の成績。「今年はすごいチャンスだと感じていたこともあった……」と、自身の中では例年のシーズンとの違いや、手応えを感じていた。そんな中での怪我だった。

 佐藤宏と同じく慶大出身選手には柳町達外野手、正木智也外野手、廣瀬隆太内野手がいる。3人は「慶応3兄弟」と呼ばれ、1軍の舞台で活躍を続けている。3人の活躍は佐藤宏にどう映っているのか。その心境を語った。

「頑張んなきゃなって。自分もって思うし、リハビリでも諦めずにやっていたら何かあるなって思う。もしここがダメでも次に繋がる何かになると思って。今はもうそういう気持ちじゃないとやっていけないなと思うので」

 大学時代から知っている3人だからこそ、受ける刺激は自然と大きくなる。1軍で活躍する3人の姿を目にすることで、支配下登録の期限まで残り2週間と迫る中でも、前向きに取り組むためのモチベーションに繋がっている。

 慶応3兄弟だと言われていることについても「自分は育成なので、みんなが知らないのももちろんあるし、1軍の舞台で活躍しているのはあの3人。知られてないのは自分の実力不足だなとはすごく思います」と、現状に目を向け、謙虚に語る。

 大卒4年目で、大事な時期での怪我。「良い状態での突然の怪我っていうのは今まで経験がなかったので、最初は現実を受け入れられないっていうか。何も考えれなかったっていうのが1番でしたね」。置かれている立場は自分自身が一番わかっているからこそ、ショックは大きかった。

「支配下になるっていうところは、今年が本当に瀬戸際なのももちろんあるんですけど、もう今からでは間に合わないので。僕的にはもちろん野球が好きなこともあるし、野球を続けたいっていう思いはもちろんあるので。その結果がどうなろうとも、上手くなりたいっていう気持ちしかないですね」

ソフトバンク・柳町達【写真:竹村岳】
ソフトバンク・柳町達【写真:竹村岳】

 そんな中で柳町は「諦めんな、気持ち切らすなって言っておいてください」とエールを送っていた。

 周囲から教えてもらい、記事で先輩からのエールを知った。「あの人も何一つ文句言わずにやることをやって、2軍でも結果を残して。そりゃ1軍でも打てるよなっていうのは見てて思いましたし、さすがだなと思います。いいお手本ですよね」。柳町も開幕を2軍で迎えるなど、悔しい時間を過ごした。そんな中でもバットを振り続ける姿勢から学ぶことは多かった。

 現実的に今季中の支配下登録は厳しい状況かもしれない。それでも必死にリハビリに励みながら、汗を流す。立場は違えど、どんな時も変わらずに前を向き続ける姿勢は、2軍にいた頃の柳町の姿によく似ている。

(飯田航平 / Kohei Iida)