「僕より飛ばす人いなかった」 野村大樹にアーチストを諦めさせた男「鼻をへし折られた」

ソフトバンク・野村大樹(左)と日本ハム・清宮幸太郎【写真:小林靖】
ソフトバンク・野村大樹(左)と日本ハム・清宮幸太郎【写真:小林靖】

中学時代に無双の野村大が受けた衝撃…清宮幸太郎との出会いこそ“原点”

 高校通算111本塁打のスラッガーを押しのけ、1年から早実高の4番を張った男が新天地で勝負をかける。西武へのトレード移籍が決まった野村大樹内野手。粘っこく、勝負強い打撃が持ち味の23歳が歩んできた道のりを振り返る。

 中学時代は名門シニアに所属し、中軸を任されていた野村大。周囲と比べて身長は低かったが、「でかいやつには絶対に負けたくなかった。誰よりも飛ばしてやろうという思いはありましたね」。反骨心が野球人生の原点だった。

「実際、中学までは僕より飛ばす人も、打つ人もいなかった。早実に行って、4番を打ちたかった」。意気揚々と進学した早実高。強豪校での“ある出会い”が、選手としての根底を変えた。

「結構天狗になっていた部分もあったんですけど、とんでもない飛距離を見て(鼻を)へし折られました。あそこと競ってもしょうがないなって思えるぐらい飛ばしていたんで。こんな人がいるなら、自分はホームランバッターとしては生きていけないなと」

 15歳の野村大に衝撃を与えたのが、1学年上で現日本ハムの清宮幸太郎内野手だった。1年から4番を任され、3年間で高校通算68本塁打を放った野村大だが、3番に座っていた「清宮先輩」の打撃をネクストバッターズサークルで見るたび、その差に打ちひしがれていたという。

「僕は率で勝負しようと決めました。打率はもちろん、一番大事なのは得点圏打率。メンタルの部分、勝負強さだけは誰にも負けないようにと思ってやってきました」

ソフトバンク・野村大樹【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・野村大樹【写真:上杉あずさ】

“勝負強さ”を測ることは難しいが、野村大は「その部分では絶対に負けない自信がある」と口にする。「チャンスでの打席が大好き。単純に打ったらカッコいいですし、野球の醍醐味ってそこにあると思うんで。昔から『打てなかったら……』とか絶対に思いませんし、打った自分しか想像しないです」。

 得点力不足に悩む西武では、早くに出番が訪れるだろう。「僕は3軍でも2軍でも、そして1軍でも初打席は全てヒットだったんです。何事も初めてには強いので」。今回も第1打席から新天地のファンの心を掴むつもりだ。

 メンタルに絶対の自信を持ちながらも、「野球以外では小さなことでへこむし、普段はそんな精神的には強くないんです」と頭をかく23歳。ファンに愛される要素は確かにある。プロ野球生活における“第2の人生”が明るく輝くことを願っている。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)