西武へ移籍「大チャンスやんか」 朝の風呂場で…野村大樹へ斉藤和巳4軍監督が伝えたこと

ソフトバンク・斉藤和巳4軍監督(左)と西武へのトレードが発表された野村大樹【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・斉藤和巳4軍監督(左)と西武へのトレードが発表された野村大樹【写真:上杉あずさ】

「大樹にとっては個人的にめちゃくちゃいいトレードだと思っている」

 ソフトバンクの野村大樹内野手と西武の齊藤大将投手の交換トレードが成立したことが5日、両球団から発表された。野村大はこの日午前、別れの挨拶のためにファーム施設「HAWKSベースボールパーク筑後」を訪れていた。タマスタ筑後で2軍練習前に挨拶をすると、今度は4軍の集合場所であるサブグラウンドへ。多くのスタッフに声を掛けられる野村大の肩に手を回し、温かく微笑み掛けていたのは斉藤和巳4軍監督だった。

「『大チャンスよ』って。本人はいろんな感情ももちろんあると思うけど、こんなチャンスはないやろうし。そのトレード先がチーム的にも今ちょっと低迷しているところもあるやろうし、そういった意味では、大樹にとっては個人的にめちゃくちゃいいトレードやし、タイミング的にも良かったんちゃうかなとは思っている」

 昨季は1軍投手コーチ、今季は4軍監督を務めている斉藤和4軍監督と内野手の野村大には、あまり接点がないようにも見える。ただ、意外にもよく言葉を交わす間柄だ。「大樹は去年1軍の試合中、ベンチで的山(哲也)さんと大樹と3人でいつも並んでいてね。増田(珠)も一緒やったけど、3、4人で並んで話していたり、いろいろ冗談を言い合ったりとかしてきたんでね、寂しさはもちろんあるよ」と思い出を振り返る。

「でも、そんな寂しさよりも大樹にとってはもう最高やなっていうのが個人的にはあるから。本当にもう、ただただ頑張れって。去年はアイツも1軍に行ったり来たりだったからね。常に冗談を言いながら、一緒にいた1人だから頑張ってほしい。ホークスから出ていった選手はピッチャーも、みんな頑張っているから、その流れに乗って、最高なチャンスだし、いい時間にしてほしいなって思うね。しんみりとした気持ちは個人的には一切なかったよ」。このトレードを前向きに受け止め、そのままの感情を野村大にぶつけた。

別れの挨拶をする野村大樹【写真:上杉あずさ】
別れの挨拶をする野村大樹【写真:上杉あずさ】

 実はこの日の練習前、2人は「若鷹寮」のお風呂場で顔を合わせていた。野村大は「おはようございます。和巳さん、行ってきます」と第一声、力強く報告したという。気持ちは痛いほど伝わった。斉藤4軍監督も力強く「大チャンスやんか」と返した。

「ホークスで全くチャンスがなかったわけじゃないやろうけど、そんなに多くのチャンスがあるっていうところでもないかなって外から見ていても思ったから。(西武では)たぶん1軍に合流して、すぐ試合に出場すると思うからね、この時期のトレードだし。同じリーグっていうのは対戦するピッチャーも初めてじゃないから、そこらへんも余計なことを考えなくていいからスムーズに入れるんちゃうかなって思う」

 斉藤和4軍監督にとって、野村大は管轄下の選手ではないものの、気に掛けていた存在だった。だからこそ、親身になって、今回のトレードを“チャンス”と背中を押す。「敵チームに行ってしまうけど、そこは別として、頑張れって」。斉藤4軍監督は野村大に優しい笑顔でエールを送っていた。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)