近藤健介は「3冠王超え」 村上、柳田を超えるNPB過去10年で最高の数字とは

ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】

近藤はここまで打率.348、13本塁打、47打点…去年に続いて視野に入る「3冠王」

 ソフトバンク・近藤健介外野手にとって、今季は「歴史的な1年」になるかもしれない。早くも折り返しを過ぎた今シーズン。73試合を終えて打率.348、13本塁打、47打点と圧巻の成績を残している。打率はリーグ唯一の3割以上と断トツで、本塁打はチームメートの山川穂高内野手に並ぶトップタイ。打点も山川に3差の2位に付けている。

 昨季も26本塁打、87打点で打撃2冠に輝き、打率も首位打者のオリックス・頓宮裕真捕手にわずか3厘差の.304でリーグ2位と、3冠王まであと一歩に迫った。今季も大記録がくっきりと視野に入っているといっていいだろう。

 ホークスにFA加入した昨季から、一気にアーチストとしての才能を開花させつつある近藤。今季の「3冠王ペース」も十分に驚きを与えるものだが、データ面では過去10年のNPBで最高水準の数字を叩き出している。

 今回用いる数値は、選手の得点創出力を示す指標「wRC+」だ。セイバーメトリクスの指標などでデータ分析を行う株式会社DELTAのデータによると、「wRC+」は打席当たりの得点創出の多さを評価する指標で、平均的な打者が「100」となる。球場による影響(パークファクター)に対する補正も行われており、条件を中立にした中で得点創出能力が測れるという。

 近藤の「wRC+」は12球団トップの「225」を記録している。(2位はヤクルトのドミンゴ・サンタナ外野手の「180」)。比較が難しい指標ではあるが、2020年に打率.318、56本塁打、134打点の成績で令和初の3冠王に輝いたヤクルト・村上宗隆内野手は当時、「224」をマークしている。

 過去10年を振り返っても、2020年の村上が記録した「224」が最高値だったが、今季の近藤はそれを上回っている。データ上ではここまで「村上超え」を果たしており、過去10年間で“最強打者”と呼べる数字を残している。

 近藤は昨季も「wRC+」が両リーグトップの「193」だった(2位は巨人・岡本和真内野手の「178」)。ホークスに注目すると、柳田悠岐外野手が2020年に「207」、2018年は「203」、2015年が「218」をマークし、いずれも12球団トップの数字だった。

「wRC+」が200を超えたのは、前述の2020年村上と過去3度記録している柳田のほかには、2022年のオリックス・吉田正尚外野手による「201」があるだけだ。過去10年でわずか3人、計5度しかクリアされていない「超難関」とも言える。

「wRC+」はいわゆる絶対評価ではなく相対評価であり、この指標だけが打者を図るものではない。「投高打低」傾向が強い今シーズンだが、近藤はお構いなしに打ちまくっていると言えるだろう。令和2人目の3冠王を狙う天才打者がどこまでの数字を残せるのか。注目してほしい。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)