大津亮介に「愛あるイジリ」も… 中村亮太が真顔で明かした本音「早く1軍でやりたい」

ソフトバンク・大津亮介(左)と中村亮太【写真:荒川祐史、上杉あずさ】
ソフトバンク・大津亮介(左)と中村亮太【写真:荒川祐史、上杉あずさ】

誕生日の翌日に4失点した中村亮に「ハッピーバースデー4失点」

 負けず嫌いな“仲良し同級生”だ。1998年生まれ世代の大津亮介投手と中村亮太投手のことだ。社会人出身2年目の大津は1軍で開幕から先発ローテーションを担い、大卒4年目の中村亮は支配下復帰を目指して、2軍で腕を振り続けている。この2人、1軍が遠征に出て、先発機会のない投手陣が筑後で残留練習をする時などに顔を合わせると、必ずと言っていいほど、じゃれ合っている。

 ある日の集合前も2人は、ちょっとした言い合いをしていた。中村亮は「自分が誕生日の次の日の登板で点を取られたのを大津が言ってきたんですよ。『いい誕生日を迎えられてましたね、26歳』っていう感じに(笑)。だから『大津さんもこの間ホームラン2本ぐらい打たれてませんでした?』って言い返しました」と、会話の内容を明かす。

 これを受けて大津は「亮太が誕生日の次の日に4失点していたのを、僕がお祝いしたんです。『ハッピーバースデー、4失点~』って。僕がホームラン打たれたことも『すごい飛ばされてましたね~』とか言ってきて、お互い言い合いしています。なかなかそういうこと言い合う人いないですよね」と笑う。決して言い争っているわけではない。仲が良いからこそ、ここまでド直球にイジり合えるのだ。

「波長は合います。何を言っても許されるような、とりあえず言いたいことを言えますね」と大津はニコリと笑う。誰とでもコミュニケーションを取っている印象だが、チームメートの中でも、特に中村亮とは気を遣うことなく何でも言い合える。同級生であり、どこか“似たもの同士”いう感覚があるようだ。

 2人が仲良くなったキッカケは昨季、大津が2軍に降格してきたタイミングだった。同い年ということもあって、一緒に食事に出かけた。中村亮は「最初はめちゃめちゃいい子だったんですよ。こんなにいい子が同い年で、三森(大貴)や緒方理貢とはまたタイプが違うような、クリーンな男が入ってきたなと思ってたんですけど、騙されましたね。最初は様子を伺っていただけで、ちょっと慣れてくるともう口がすごくて……」と思い返す。一方の大津も「亮太の第一印象は、いいヤツなんだろうなって。第一印象は、ですよ。今ではもうすごい嘘つき野郎です」と応戦する。

 オフも2人は“競争”する。「ゴルフとかボーリングとかカラオケ……何かあると大津が意識してくるんですよ。自分的にはもう眼中にない(笑)。意識するレベルまで来ていないんで、相手にもしていなかったんですけど、毎回毎回、僕のスコアばっかり気にしてブツブツ言ってますよ。日頃から勝負してくるんです。ゴルフも大津は『俺の方ができる』って言うくせに、コースを回る直前になったら『ちょっとハンデちょうだい』って」と中村亮は明かす。

 ただ、野球となると、また少し様相が違ってくる。中村亮は「自分も早く同じ舞台で言い合いができるように、自分がまず上に行かないといけない。立場的にはもう余裕で今、圧倒されてるので」という。1軍の先発を担う大津と、育成から支配下復帰を目指して必死に戦う自分の立場を、真正面から受け止める。

 支配下登録期限まで約1か月しか残されていない。危機感を募らせつつ、結果を残している。6月は5登板で10回2/3を無失点。5日のウエスタン・リーグの中日戦(みずほPayPayドーム)では2番手で3回2/3を無失点に封じて、今季初勝利を挙げた。そこから3登板連続で中継ぎとして複数イニングを投げ、勝利投手になっている。

 そんな中村亮がハニカミながら、見せてくれたものがある。バッグに貼られた大津のシールとカードだ。

道具ケースに貼られた大津のシールとカード【写真:上杉あずさ】
道具ケースに貼られた大津のシールとカード【写真:上杉あずさ】

 みずほPayPayドームで2軍戦が開催されていた期間中、残留組として2軍の練習に加わっていた大津にピンクフルデー仕様のシールを貼られるイタズラをされた。

やれやれ顔をする中村亮太【写真:上杉あずさ】
やれやれ顔をする中村亮太【写真:上杉あずさ】

 呆れ顔の中村亮だったが、意外な“御利益”もあった。「このシールを貼られてから調子が良くなってきましたね。もしかしたら、そういう意味合いがあったのかもしれないですね。まあ、でもその後、大津は7点ぐらい取られてましたけどね」。自身は無失点を続け、きっちりと大津には“カウンターパンチ”をお見舞いしていた。

「6月になって状態も上がってきて、スピードも出てきた。支配下がどうなるのかわからないですけど、これを続けていけたら、やれることをやっていけたらいいのかなって」。中村亮が支配下に復帰できれば“大津&中村亮”コンビのリレーを1軍で見られるかもしれない。「一緒におったら楽しいし、できるなら一緒に1軍でやりたい。早く一緒に遠征も行って、ご飯も行きたいし、リレーもしたい」。大津も中村亮の支配下登録を切に願っている。

「頑張って大津と同じ舞台で、そこで言い合いもできるように頑張っていきたいです」。サービス精神旺盛に冗談も交えて、こう語ってくれた中村亮。支配下復帰への思いは人一倍、強い。これまで味わった悔しさも胸に秘める。枠を勝ち取った先にある“仲良し同級生”の1軍共演を期待したい。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)