山川穂高は「本当にすごいな」 131打席ぶり弾…近藤健介が見てきた主砲の“苦悩”

ソフトバンク・山川穂高(左)と近藤健介【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・山川穂高(左)と近藤健介【写真:荒川祐史】

練習中には古巣の“師匠”にアドバイスを求める姿も…

 久しぶりの一発に笑顔が溢れた。3日に行われた西武戦(東京ドーム)の6回1死、山川穂高内野手が初球の直球を振り抜いた。「行ってくれと思いながら走ってました」と振り返った一打は、左中間に飛び込む131打席ぶりの13号ソロとなった。主砲のアーチに次打者の近藤健介外野手は何を感じたのだろうか。

 6月終了時点での山川の成績は打率.229、12本塁打、49打点。開幕から4番を任され続け、1度もその座を譲ったことはないが、6月は打率.182、0本塁打、4打点と不振に苦しんだ。

 山川の次を打つ近藤も開幕から5番が定位置。打撃に苦しむ主砲を助けるかのように、6月は打率.413、7本塁打、23打点と打ちまくった。そんな近藤の目に山川はどのように映っていたのだろうか。「本当にすごいなと思います」と語った理由とは――。

「毎日しっかり考えて、投げやりみたいな打席もないですし、なんとか打ちたいなっていう思いは伝わってきていました」

 開幕からネクストバッターズサークルで主砲の打撃を見続けてきた近藤。山川の姿からは不振脱却のための必死な思いが伝わっていた。そんな中で生まれた、誰もが待ち望んだ一発。「打った瞬間に行ったと思ったので、(嬉しくて)手を上げちゃいました」と、近藤も一緒になって喜びを表現した。

 この一発が生まれたのは、山川の貪欲な姿勢があったからこそだ。通算231本塁打、3度の本塁打王を獲得した実績があっても、人の意見を聞き入れる柔軟さがある。「色々聞かれたこともありますし、いろんな人の意見も取り入れられる人だと思います。本当にすごいなと思います」と、近藤もアドバイスを求められたことがあったと明かした。

 そんな姿勢は、この日の練習中にも見られた。「中村(剛也)さんは僕の調子が悪くなるだろうなと思っていたみたいなので。西武の時からそうですけど、困ったら中村さんだったので。今でもたまに会えば、こういう時どうしますか? とか、そういう話をするので。今日もめちゃくちゃ参考になってます」。古巣の先輩に技術面のアドバイスをもらいに行き、それがすぐに結果として表れた。

「2年目、3年目になった時に、僕は初めて中村さんにどんどん聞けるようになりました。中村さんの姿を1軍で見られるようになってから、急激にバッティングが変わっていった」。山川は以前にもこのように語っており、意見を聞く姿勢は昔から変わらない。

「間違いなく6月よりはよくなると思います。本当にこんがらがっていたので。ホームランが出て、感触が手とか脳に残っているので。言葉で説明するのは難しいですけど、感覚がしばらく残ると思うので。それでホームランが打てるのか打てないのかはありますけど、いい打席になると思います」

 プロ入り後、最長のブランクとなった131打席ぶりの本塁打。「7月一発目の試合でホームランが出たのは最高です。明後日(4日)から、もっともっと出るようにしていくだけかなと思います」と、明るい表情を見せた。

 チームにとっても嬉しい本塁打。「技術がある方なので。ホームランも、誰よりも打ってきている人ですし、感覚を掴めばすぐにポンポン出るんじゃないかなと思います」。復調のキッカケになってほしいと近藤も期待を寄せた。長かったトンネル。どんな時でも変わらない山川の姿勢が生んだ見事な一打だった。

(飯田航平 / Kohei Iida)