横浜の走塁ミスは「自分自身が弱い」 周東佑京の胸中…いつも救われる今宮健太の存在

ソフトバンク・周東佑京(左)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・周東佑京(左)【写真:荒川祐史】

小久保監督が呈した苦言「ありえないプレーを起こしている隙」

 周東佑京内野手が鷹フルの単独インタビューに応じた。後編のテーマは「横浜での走塁」について。小久保裕紀監督からも「隙」という表現で、苦言を呈されたシーン。本人の胸中は、どんなものだったのか。「自分自身が弱い」。今季から選手会長を務め、苦悩とも向き合う中で、手を差し伸べてくれるのは今宮健太内野手の存在。走塁ミスと先輩の頼もしさについて、本音で語った。

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 舞台は6月8日のDeNA戦(横浜スタジアム)だった。「1番・中堅」で出場して5回無死で打席に立つと、投ゴロで一塁を駆け抜けた。タイミングはアウトだったものの、一塁のオースティンが捕球ミス。先頭打者として出塁したが、自分がセーフになっていることに気がつかず、フェアゾーンを通ってベンチに戻ろうとした。タッチアウトとなり、追加点のチャンスは簡単に潰えてしまった。

 8回に松本裕樹投手が3失点を喫して同点に追いつかれた。9回に打線が2点を奪って逆転勝利したものの、試合後の小久保監督は当然、厳しかった。「ありえないプレーを起こしている隙。よく負けなかったと思います。これだけチーム状態というか、貯金が増えてくる時に一番気をつけなあかんのは隙なので。ノーアウトランナーなしであの隙……。そんなことしていたら簡単には勝たせませんよ、というゲームだったんじゃないですかね」。そして自ら「以上です」と言い、会見を50秒で切り上げた。

 らしからぬミスで、指揮官から苦言を呈された。周東はどのように受け止めたのか。

「やることをやっていればああいうことはならないと思います。やることをやっていないと、いずれは出てきます。それが遅かれ早かれ、あの場面で出たので。序盤でよかったと、捉えるかどうか……。ああいうミスが出たことで、より一層、やることをしっかりやろうと見つめ直しました」

 5月下旬から打撃成績が下降線を描き、6月上旬にはスタメンを外れる日も続いた。選手会長に就任して見られる立場になったものの、本人にとっても「立ち振る舞いは非常に悪かった」と反省する期間。だからこそ「周りが見えないというか、本当に自分のことしか考えていなかったので。自分のことしか考えられなくなります、どうしても。もっと周りに目を向けないといけないなと感じました」と走塁ミスに繋がってしまった。同時に、もう1度、自分の足元を見つめ直すような出来事にもなった。

 チームはこの日の日本ハム戦でも勝利して48勝20敗3分け。貯金をこれだけ作って首位を走っていても、小久保監督は「隙」という言葉でナインを引き締め続けている。横浜でのミスを踏まえて周東は「やっている本人は隙とか油断とか全く思わないんですけど、周りから見た時にそう見えるのは、そういうことなんだと思います」と反省する。選手会長となって、チームの先頭を走ることになった今シーズン。自分自身を「弱い」と表現した。

「首位にいて監督も言っていますけど、ああいうことをやっていると勝てない。ずっと、キャンプから一貫して言っていることですし、強いチームはああいうプレーも出ないです。ああいうことが出るということは、自分自身が弱いと思いますね。僕はそういう(選手会長という)立場にもいますし、どんな状況でも変わらないというか、常にやることをやって、また新しい1日を迎える。常に同じサイクルでやっていかないといけないです」

ソフトバンク・周東佑京(左)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・周東佑京(左)【写真:荒川祐史】
一塁を駆け抜ける周東佑京【写真:荒川祐史】
一塁を駆け抜ける周東佑京【写真:荒川祐史】

 今季からホークスでは本格的に「コーディネーター制度」を導入している。1軍から4軍までのコーチが、選手に対する指導を統一するための取り組みだ。8日のDeNA戦の後、「あのプレーに関しては話していないです」と1対1で首脳陣から何かを言われたことはないという。その上で「全体ミーティングでそういうふうに(アウトになってもフェアゾーンから)帰るのはやめましょうっていう話がありました。1軍から4軍まで通して、こっち(ファウルゾーン)から帰りましょうって統一されました」と明かした。1つのミスを機に、4軍まで意識を浸透させたのは、ホークスならではのスピード感だ。

 指揮官の苦言で、計り知れない悔しさと、自分への苛立ちを抱いただろう。そんな中で手を差し伸べてくれたのが、前任の選手会長でもある今宮だ。みずほPayPayドームでの試合後、打撃練習をする時間がよく重なるという。「試合が終わって一緒に練習もするようになって、いろんな話をするようになりました、最近になって。前を向くというか、話を聞いてくれるので。聞いてもらいながら、なんとか頑張っています」と、心から寄り添ってくれる理解者が一番近くにいる。

 今宮自身も周東の姿には「しんどいと思いますけど、変わってきていると思います」と言及していた。今宮との会話の内容を周東は「普通に『こうなんですけど、どうなんですかね』みたいな」と明かす。グラウンドでの成績がなかなか出ないことで周りが見えなくなってしまう時。「悪くなってきてちょっとあれになると、言われることは多いです。(投げやりになるな、と)健太さんにもよく言われるので」と、常に自分の方向性を正してくれるような先輩だ。

ソフトバンク・今宮健太(左)と周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太(左)と周東佑京【写真:竹村岳】

 これまで何度も“神走塁”を生み出してきた。ファンを魅了してきたのは、その裏にプロとして徹底した準備があったからだ。「僕みたいな選手、走塁を売りにしている選手が、ああいうミスをやっちゃいけないと思います。それが一番ですね。より目立ってしまいますから」。少し時間が経ち、冷静に振り返る口調からは、周東の成長そのものが伝わってきた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)