4度の登録抹消…本音激白「難しい」 広島のホテルで受け取った“刺激”、澤柳亮太郎の胸中

ソフトバンク・澤柳亮太郎【写真:竹村岳】
ソフトバンク・澤柳亮太郎【写真:竹村岳】

6月15日に1軍昇格も16日に登録抹消…倉野コーチも明かした明確な理由とは

 たった1日で、姿を消すことになった。「難しい」と、本音を吐露した。ソフトバンクの澤柳亮太郎投手は15日に1軍昇格して、16日に登録抹消された。ルーキーながら開幕1軍入りしたものの、これが今季4回目の抹消だ。率直な胸中を明かしながらも、短い期間で必死に何かを持ち帰ろうとしている。「いい教材がたくさんある」と名前を挙げたのが、松本裕樹投手とロベルト・オスナ投手だった。

 ロキテクノ富山からドラフト5位指名を受けて入団した右腕。1軍では3試合に登板して0勝1敗、防御率3.86の成績を残している。ウエスタン・リーグでは0勝0敗、4セーブ、防御率2.25だ。5月6日に登録されて16日に抹消。同じく5月31日に登録され、6月4日に抹消と、どちらの期間も1軍登板のチャンスすら与えられなかった。「気持ち的に難しいところもあるんですけど」としつつも、繰り返される登録抹消に率直な思いを語った。

「倉野さんとか、小久保監督がどう考えているのかはわからないですけど、自分のことをまず呼んでくれているのはありがたいです。ちょっとでも1軍の雰囲気を味わえたらと(首脳陣も思っていると)思う。自分は投げるチャンスがあれば投げますし、投げられなかったとしても、ただ来ただけでも、掴み取れるものがあれば。そうやっているうちに、投げられるチャンスがあれば誰かと交代して入っていけたら」

 社会人時代はベットに入るのが日付をまたぐことも珍しくない日々。「工場のライン作業に入ったり、フルタイムで働いたり」と、野球以外のことで時間を取られることが多く、人生の全てを捧げられるプロ野球の世界を「天国みたいなところ」とも表現していた。苦難を乗り越えてきた男にとって、1軍切符を掴めるだけでポジティブに捉えられる。与えられた環境の中で最善を尽くすことは、澤柳にとっても当然のことだった。

「最初の方は、開幕1軍で1か月くらい帯同して、落ちる時は悔しいと思ったんですけど、今はそういうポジションにいると思う。(当落線上の)立ち位置に自分がいるのも、そういうピッチングをしたからだと思うので。1軍では投げていないからわからないですけど、何とか2軍で結果を出していくしかない」

 倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「1日でも選手は上がった方が嬉しいですし、励みにもなる。例えば『1日だったら僕もういいです』っていう人はまずいないです。『1日しか登録ないけど来る?』って聞いたとしますよ? 絶対に『行かせてください』ってみんな手を挙げます」とキッパリと理由を話していた。1軍にいた日々の中で、澤柳はどんなことを学び、得ているのか。

「例えばなんですけど、今2軍だと最終回とか、抑えとかをやらせてもらっています。自分が1軍にいる時は初回からずっと入って、他の先輩たちの動きを見させてもらっている。松本(裕)さんやオスナさんがどう動いているのかなとか、その試合前の動きも見させてもらって、学んで、どうやって動いているのかを2軍で試しているところです」

 松本裕とオスナ。ホークスが誇る必勝パターンの名前を挙げた。澤柳自身も「将来的に勝ちパターンや抑えに入っていきたいと思っているので、今はそれの準備段階としてやらせてもらっている」と志を抱いているだけに、その2人に目線が行くのも自然な流れだった。登板直前の集中力のあげ方や、打者のデータをインプットする作業、試合前の球数の管理など、自分が目を凝らせば学べることはたくさんある。「投げられないで落とされても、そういうことを見させてもらっているので、いい教材がたくさんある」と前だけを見ていた。

 同期入団の選手たちも、刺激となっている。14日の阪神戦(みずほPayPayドーム)では、ドラフト3位の廣瀨隆太内野手がプロ初ホームランを放った。2軍の遠征先、広島のホテルで試合を見ていた澤柳も「速攻LINE送りました。『ナイスホームラン』って。自分もやるしかないですね」と、自室で拳を握った。支配下の同期入団は7人。高卒の前田悠伍投手と藤田悠太郎捕手以外は、もう1軍の舞台を経験した。同じタイミングでプロの世界に入った仲間たちと、ホークスを引っ張って行きたい。

「自分としても他の選手たちが試合に出ていたりするのは、すごく嬉しいこと。自分は自分のことをやるだけですし、ピッチングや最終回に行くってなった時のアップとかも学ばせてもらっています。それこそ同期のみんなで1軍をひっくり返せたら最高かなと思いますね。自分的にも焦りというよりも、みんなで上がって行きたいです。同期のみんなで(居場所を)確立させて行きたいです」

 自分の実力と立ち位置を受け入れて、叶えたいことがたくさんある。「落ちないとか、そのまま残ろうとかじゃなくて、チャンスが来たら投げるし。2軍に落ちたとしても学んだことを生かしてやっていこうと思っています」。そう語る澤柳の目線は、しっかりと未来を見つめていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)